怖い話と怪談の処

ブログ名の最後の文字は(ところ)と読みます。怖い話や不思議な話が大好きな方、是非ご堪能下さい。記事への★ありがとうございます。

山関係

うねり草の道

Yさんがその貸家に越してきたのは、春先のことだった。 築年数の古い平屋で、裏には鬱蒼とした山が迫っていた。 大家は「裏山には入らない方がいいですよ」とだけ言ったが、理由は語らなかった。 裏口の窓からは、誰も使っていない細い山道が見えた。 昼間は…

N県・霧が深い森の灯り

KさんがN県の山中を走っていた時の体験。 その日は仕事の関係で、山を越えた先の町まで車で移動していた。 予定よりも遅くなり、峠に差し掛かる頃には夜になっていた。 霧が出始めたのは、ちょうど山の中腹を走っている時だった。 街灯はなく車のヘッドライ…

T県・◯◯の吊り橋

まだ夏のMさんたち三人が、T県の山間にある渓谷へ出かけたときの体験。 その渓谷は観光地というよりも、地元の人でもあまり近寄らない場所だった。 細い山道の先にある古びた吊り橋は、木の板が軋み、足元の隙間から谷底が見えるほど深い。 立ち昇る湿気と体…

夜の展望台にいたもの

Oさんが友人二人と夜景を見に行ったときの事。 季節は秋の終わり。 空気が澄んで星がよく見える夜だった。 三人は、街から少し離れた山の上の展望台に車で向かった。 展望台の駐車場には彼女らの車しかない。 他に人影もなく、周囲は街灯の届かない暗闇に包…

林道の奥の赤い屋根

Nさんが友人とドライブ中に体験した出来事。 季節は晩夏、夕方の陽が傾きはじめたころ。 山のふもとの道を走っていると、古びた標識に「この先通行止め」と書かれた林道の入口が見えた。 錆びたゲートが半分開いたままになっており、草がアスファルトの割れ…

峠の祠に立つ影

ツーリングが趣味のSさんが体験した、夏の夜の出来事。 その日、Sさんは仕事帰りに遠回りして、昔使われていた旧道の峠を越えて帰ることにした。 街灯もほとんどなく車の通りもない。 アスファルトはところどころひび割れ、道端には草が生い茂っている。 そ…

霧の中の案内人

これは登山愛好家のYさんが体験した話である。 会社勤めの傍ら、一人で山を歩くのが趣味だったYさんは、その日、地元に新しく整備された低山の登山道を試そうと、早朝から山に入った。 空模様は悪くなかったが、山に足を踏み入れて間もなく、どこからともな…

尾根の向こうの境界線

これは大学生のMさんと、その友人たちが夏休みに体験した話である。 三人は登山サークルに所属しており、比較的マイナーな山域を縦走する計画を立てていた。 二日目、予定していたルートを進むうちに、ふと地図には載っていない古道を見つける。 そこからな…

道の脇に座る石

Sさんが山奥をドライブしていた時の話。 Sさんは趣味で林道を走るのが好きだった。 舗装もされていないような細い道を、車でゆっくりと進み、地図にも載っていない道を探すのが楽しみだった。 ある日の夕方近く、雨が降りそうなどんよりとした曇り空の下、人…

山小屋の覗き窓から見える白いもの

大学生のTさんがサークル仲間と体験した出来事。 数人で登山に出かけたTさんたちは、山中にある古びた山小屋で一泊することになった。 小屋は木造で、壁には古い覗き窓が残されており、外を確認するためのものらしかった。 夜になり、仲間たちは疲れ果てて眠…

落ち葉の下から覗くもの

Tさんが友人のKさんと、紅葉を見に行った時の出来事。 秋の午後、二人は山道を歩いていた。 あたりは紅葉で鮮やかに染まり、風が吹くたびに落ち葉がひらひらと舞い落ちる。 観光客も少なく、静かで心地よい雰囲気の中を進んでいた。 ところが、Tさんが落ち葉…

登ってはいけない岩場

これはSさんが体験したという話。 地元の人に「決して登るな」と言われていた岩場が山の中にあった。 奇妙な言い伝えがあるらしかったが、Sさんは半信半疑で、好奇心に負けてその山を訪れた。 しばらく登っていくと、木々の間からその岩場が姿を現した。 灰…

沢登りで聞こえてきた楽器

これは大学生のWさんが経験した話。 Wさんは友人たちと沢登りを楽しんでいた。 夏の午後、木漏れ日の中で休憩を取っていたとき、どこからともなく、かすかな楽器の音が耳に届いた。 木々のざわめきや沢の水音に混じりながらも、不思議とはっきりと心に残る旋…

視界の隅に現れる人影

これは山で測量士として働く、Yさんから聞いた話。 Yさんの仕事は、一人で山中を歩き回りながら計測を行うことが多く、誰もいない山の奥で過ごす時間にも慣れていた。 その日もいつものように機材を担ぎ、急な斜面を越えて作業をしていた。 午後になると空は…

古い集落の跡で集まってきた人影

これは大学生のTさんから聞いた話。 Tさんは探検サークルに所属しており、仲間数人と山奥の古道を歩いていた。 観光客が訪れるような整備された道ではなく、地図にもほとんど記載がない廃れた道だった。 日が傾き始めるとあたりは急に薄暗くなり、気づけば道…

岩肌に貼りつくもの

Tさんは登山が趣味で、その日は岩場の多いコースを一人で登っていた。 午後の日差しに照らされた岩壁を慎重に登っていると、ふと、目の端に小さな影がよぎった。 よく見ると、岩肌にトカゲのようなものが貼りついている。 だが普通のトカゲではなかった。 体…

鹿のような群れ

Mさんは趣味で山歩きをしており、その日も人気の少ない登山道を一人で登っていた。 昼を少し過ぎた頃、木々の合間から広い草地に出た。 そこには十数頭の鹿の群れがいた。 思わぬ出会いに感動していたのだが、すぐに違和感を覚える。 どの鹿にも角がない。 …

尾根を這うもの

Kさんは単独での登山が好きで、その日も人気の少ない山の尾根を歩いていた。 午後の光が傾き始め、稜線の向こうには岩肌が夕陽に照らされて光っている。 心地よい風に汗を乾かしながら進んでいたとき、ふと視界の端に異様なものが映った。 尾根の先、岩場の…

空を泳ぐ魚

Rさんがその奇妙な光景を目にしたのは、夏の終わりの夕暮れだった。 人気のない山道を歩いて崖沿いに出ると、西日を浴びた空に不自然な影が浮かんでいた。 雲でも鳥でもない。それは群れを成した魚だった。 銀色の鱗のような輝きを放ちながら、尾を揺らし、…

雪原に浮かぶ輪郭

Rさんは雪山で一人、テントを張って夜を迎えていた。 外は吹雪もなく、月明かりが淡く雪面を照らしている。 静まり返った白い世界を見ながら温かい飲み物を口にしていたとき、異様なものに気づいた。 テントの外、少し離れた雪原に黒い輪郭が浮かんでいる。 …

吊り橋の下にいる白いもの

Nさんは山奥の古い吊り橋を渡っていた。 谷底は深く、白い霧が渦を巻いている。 足元の木板は湿って軋み、橋全体が風に合わせて揺れていた。 その時、視線の端で違和感を覚えた。 橋の下、霧の中に白くて長いものが垂れ下がっている。 最初は補強用のロープ…

沢沿いの大きな岩の口

Fさんは沢沿いの岩場で一息ついていた。 流れる水音と苔むした匂いの中、ふと視線を落とすと、岩の下に小さな穴があることに気づく。 動物の巣穴にしてはおかしい。 興味を惹かれ、身をかがめて覗き込んだ瞬間、背筋が冷たくなった。 穴の奥に歯が並んでいた…

倒木の中の顔

Mさんは沢沿いの岩に腰を下ろし、冷たい水を飲みながら一息ついていた。 周囲はしんとした森で、風もなく、水音だけが響いている。 ふと視線を横にやると、近くに倒れた大木があった。 なんとなくその倒木を見ていると、幹の割れ目に、何かが見える事に気が…

山の中腹でみた群れ

Tさんは夜明け頃、人気のない山を一人で登っていた。 ライトの光だけを頼りに、霧の濃い登山道を進む。 山の中腹付近に差しかかったとき、異様なものを見た。 前方の霧の中に、黒い塊がいくつもいる。最初は鹿の群れかと思ったが、足音がしない。 風もないの…

尾根の上にあった鏡のようなもの

Yさんは単独で山を歩くのが好きで、その日も夕暮れ前の尾根道を進んでいた。 赤く染まった空を背に、前方に不自然な光を見つけたとき足を止めた。 岩場の上に何かが立っている。 鏡のように光を返す細長い板だ。 誰かが設置したのかと思い近づいた。 しかし…

谷に這う白いもの

Kさんがその山に入ったのは、梅雨明け直後の蒸し暑い日だった。 標高はそれほど高くないが、谷が深く、地形のせいで霧が出やすい。 地元の登山者の間では「霧の日は谷を覗くな」と言われているらしいが、Kさんはそんな迷信を気にするタイプじゃなかった。 あ…

沢沿いに立つ腕の長い影

登山が趣味のKさんは、仲間のSさん、Tさんと三人で沢登りをする計画を立てていた。 その沢は県内でも静かな山奥にあることで知られ、観光客は少ない。 苔むした岩と冷たい水の音だけが続く、まさに自然そのものの景色だ。 昼を過ぎ、沢は両側を切り立った岩…

山道の赤黒い背中

登山が趣味のOさんが、休日を利用して一人で近郊の山へ出かけた時の事。 その日は天気もよく、山頂からの景色を楽しんだあと、ゆっくりと下山していた。 だが、夕暮れの山は想像以上に早く影を落とし、木々の間は次第に薄暗さを増していく。 足元に気をつけ…

草が静かにうねっている

Rさんは自然調査の仕事で、ある湿原地帯を訪れていた。 昼を過ぎ、空は鈍い灰色で遠くの山影が霞んでいる。 湿地の草原は広く、足元には小さな水たまりが点在していた。 ふと立ち止まったとき、Rさんは奇妙なことに気づく。 風が吹いていないのに、数メート…

山肌の奥に“目”があった

Aさんは休日の早朝、単独で標高千メートルほどの山を登っていた。 整備された登山道を外れ、少し険しい岩の斜面をよじ登っていたときのこと。 岩と岩の重なりが生んだ、ちょうど人の頭ひとつ分ほどの隙間に、黒く濡れたような空洞があるのに気がついた。 湿…