緑に覆われた山奥にある廃校。
かつては子供たちの笑い声が響いていた場所も、今は静寂に包まれ朽ち果てている。
ある日の深夜、私は隣の市の山奥にある廃校の探検に訪れた。
ライトを手に持ち、薄暗い校舎を歩きながらかつての活気を感じようとしていた。
4階の奥の方までやってきた。
その教室はどうやら音楽室のようで、ドア窓から覗くと音楽室らしい雰囲気の作りだった。
ふとドアに触れて回してみると、ドアが開いていることに気がついた。
ドアを開け音楽室に足を踏み入れると、埃まみれのピアノとその横に置かれたオルゴールが目に入った。
オルゴールを手に取ると、どこか懐かしいメロディーが流れ出した。
その瞬間、背後から人の気配を感じた。
振り返るとそこには誰もいない。
気のせいか、と安心した時だった。
ふいにオルゴールのメロディーが不気味なほど速く鳴りだし、不協和音に変貌していた。
なんだこれ!?と恐怖を感じ、思わずオルゴールを床に落とし壊してしまった。
するとメロディーは止み静寂が戻ってきた。
だが、私の背後から誰かがこちらを見つめているような視線を感じる。
振り返ると音楽室の奥の壁に薄暗い影が映っていた。
影はゆっくりとこちらに近づいてくるように見える。
私は恐怖で体が震え、動けなくなった。
影が目の前に迫った瞬間、私は気を失ってしまった。
目覚めると私は校舎の外にいた。
太陽が眩しく鳥のさえずりが聞こえている。
あの影は何だったのか、なぜ私は外で寝ていたのだろうか?と疑問に思ったのだが、いくら考えても分からなかった。
数日後の深夜、あの時の出来事が気になった私は再び廃校を訪れた。
音楽室に入り壊れたオルゴールを触ってみる。
するとオルゴールが動き出し、再びあの懐かしいメロディーが流れ出した。
あの時もこうして流れている曲を聞いていたな、と思いながら、あの時見た影は本当だったのだろうか?と音楽室の奥の壁に近づいた。
壁には薄暗い影が映っている。
私は恐怖を感じながらも影に手を伸ばした。
影に触れると意識が飛んでしまった。
気がつくとそこは薄暗く、先程の音楽室のようだったが全体に霧がかっているようで、はっきりとは分からない。
そんな霧のような教室を歩いていると、準備室らしき部屋から子供たちの笑い声が聞こえてきた。
こんな時間に子供!?と不思議に思いながら近づいてみると、準備室の中で子供たちが遊んでいる。
そこまで確認してから気がついた。
こんな深夜の時間、廃校の4階で子供たちが遊んでいるのも変だが、その子供たちはライトを持っていない。
にも関わらず姿がはっきり見えている。
これは見てはいけないものだと思った時、子供たちが一斉にこちらを振り返った。
さっきまでの子供らしい顔が消え、睨みつけるような顔になっている。
子供たちが口々に何かを言いながらだんだん近づいてくる、逃げないと!と頭では思っているのだが、体が言う事を聞いてくれない。
なんとか動かそうと必死にもがいていると、やがて子供たちが周りに集まりだし、手を私の顔や頭に押し付けてきた。
そこでまた意識が飛んでしまったらしく、気がついた時には元の音楽室で倒れていた。
手には壊れたオルゴールが握られていた。
私は音楽室を飛び出し、廃校から急いで離れた。