毎年夏になると、家族で山の別荘に行くのが恒例だった。
別荘の裏手には鬱蒼とした森が広がっており、子供の頃は少し不気味な感じがして近づかないようにしていた。
ある年の夏、好奇心に駆られて森の中に入ってみた。
木々の間を進んでいくと、小さな祠を見つけた。
祠の周りは枯れ葉や小枝が綺麗に掃き清められており、誰かが定期的に掃除をしているようだった。
祠の中が気になって遠目に覗いてみたのだが、遠目からでは何も見えない。
ただ、祠の奥に白い布が垂れ下がっているのが見えた。
なんだろう?とよく見ると、それは布ではなく顔のない白い蛇のようだった。
私は驚いて「うわあっ!」と叫んで尻もちをついたのだが、それに驚いたその蛇は、祠の奥から這い出て森の奥へと逃げていった。
結構な太さの蛇で、長さも祠の中に収まっていたとは思えない長さだった。
私は急いで立ち上がり、すぐに祠のあった場所から逃げ出した。
家族に祠のことを話したのだが、誰もそんな祠を見たことがないと言う。
そんなはずは無いと思い、翌日親と一緒にそこに行く事にした。
翌日、親と一緒に祠を見に行ったが、祠は跡形もなく消えていた。
もちろん白い蛇もいない。
夢でも見てたんじゃない?と言われたが、あれは夢とは思えなかった。
その日の夜、白い蛇の夢を見た。
夢の中で白い蛇は、私を森の奥へと誘って祠へと導く。
祠につき、祠の中を覗いてみると祠の中には顔のない老人が座っていて、私に向かって何かを訴えかけているようだった。
夢の中で見た祠を探すために何度も森の中に入ってみたが、二度と見つけることはできなかった。