K県の半島にある遊園地。
海沿いの丘陵地に広がるその場所は、今では雑草が生い茂り、朽ち果てた建物が並ぶ廃墟となっている。
かつては多くの家族連れで賑わった園内も、今は人影がない。
錆びついた観覧車やジェットコースターが、まるで異様なオブジェのように立ち並ぶ。
ある夏の日、一人の女性Aが廃墟となった遊園地を訪れた。
Aは心霊スポット巡りが趣味で、噂に聞いていたこの場所をどうしても見てみたかったのだ。
午後3時過ぎ、すでに陽が傾き始め薄暗い園内に入ると、ひんやりとした空気に包まれた。
雑草を踏みしめながらゆっくりと園内を進んで行く。
ふと奇妙な音に気づいた。
どこからか、かすかに子供たちの笑い声が聞こえてくるのだ。
しかし周りに人影は見当たらない。
笑い声に導かれるように園内の奥へと進んでいく。
たどり着いたのは、かつて子供向けの遊戯施設だった場所。
色褪せたメリーゴーランドや、壊れたブランコが並ぶその場所は静寂に包まれていた。
しかし確かに聞いたのだ。
どこからか子供たちの笑い声が聞こえてくる。
「ねえねえ、こっちだよ!」
声のする方へ目を向けると、遊具の陰からこちらをじっと見つめる少女の姿を見た。
少女は白いワンピースを着て、長い髪をツインテールにしていた。
Aは声をかけようとしたが、少女は何も言わずただじっと見つめている。
その目はどこか虚ろで冷たい。
背筋に悪寒を感じ思わず後ずさりした。
その時、少女は不気味な笑みを浮かべこう言った。
「一緒に遊ぼうよ?」
Aは恐怖で声も出なかった。
その瞬間、少女は姿を消した。
Aは夢中でその場を離れ、園内を走り出した。
しかしどこへ行っても、あの少女の不気味な笑み声が聞こえてくる。
日が完全に暮れ、園内は真っ暗闇に包まれた。
Aは恐怖で足も動かず、その場に立ち尽くすしかなかった。
その時、Aの背後から声が聞こえた。
「もう逃げられないよ。」
Aは振り返るとそこにはあの少女が立っていた。
少女はAの手を掴み、暗闇へと引きずり込んでいった。
Aが再び目を覚ました時、そこは病院のベッドだった。
Aは数日間意識を失っていたらしい。
医師の話によると、Aは遊園地で倒れているところを発見されたそうだ。