山奥に住むBさんから聞いた、奇妙な体験談。
Bさんがまだ小学生だった頃、山裾の小さな村に住んでいた。
家のすぐ裏は森が広がり、少し歩けば山道が始まるような自然豊かな環境だった。
BさんにはF君とEちゃんという仲の良い友達がいて、よく3人で森の中で秘密基地を作ったり、探検ごっこをしたりして遊んでいた。
ある曇りの日、3人はいつものように森の中で特撮ヒーローごっこに夢中になっていた。
F君が怪獣役、Eちゃんがヒロイン役、そしてBさんが正義のヒーロー役だ。
段ボールで作った剣を振りかざし、F君を追いかけ回していると、突然空がゴロゴロと鳴り出した。
「うわ、雷だ!」
Eちゃんが空を見上げると、どんよりとした雲がみるみるうちに広がり、大粒の雨が降り始めた。
「早く雨宿りしないと!そこの納屋に急げ!」
Bさんの声に、3人は慌てて近くの納屋に駆け込んだ。
納屋の中は薄暗く、埃っぽい匂いがした。
雨宿りには十分な広さで3人はホッと胸をなでおろした。
「すごい雨だね」
F君が納屋の窓から外の様子を伺う。
土砂降りの雨であっという間に地面に水たまりができていた。
「でも、ちょっとワクワクするね」
Eちゃんは目を輝かせている。
秘密基地の中にいるような気分で少し楽しくなってきたようだ。
すると3人が話している最中、納屋の外からガサガサと音が聞こえてきた。
音は山の方から聞こえてくるようで、何かの動物が歩いているような感じだった。
「なんだろう?」
3人は興味津々で納屋の窓から山の方を覗いた。
木々が鬱蒼と茂る森の中は暗く、よく見えない。
しかしガサガサという音はどんどん近づいてきていた。
「誰かいるのかな?」
F君が少し不安そうに言った。
その時、森の中から黒い人影のようなものが現れた。
人影は身長が2メートルほどあり、細長い体型をしていた。
顔は暗くてよく見えなかったが、こちらを伺うようにキョロキョロとしている様子がわかった。
3人は恐怖で息を呑んだ。
動くことも声を出すこともできず、ただじっと人影を見つめていた。
しばらくの間、人影は納屋の周りをウロウロしていたが、やがて何もなかったかのように森の中へと消えていった。
3人はしばらくの間、納屋の中で震えながら身を寄せ合っていた。
雨が止んでからも、すぐに納屋から出ることはできず、日が暮れるまでじっと息を潜めていたそうだ。