中学生のSさんは、2年生の時に隣の市にある山のキャンプ場へ野外学習に行った。
2年生の恒例行事であり、バンガローで一泊二日の予定だった。
1日目の夜の行事が終わり、皆それぞれバンガローに戻っていく。
Sさんは喉が渇いていたので、キャンプ場の入り口近くにある自販機へ向かった。
自販機にお金を入れ、お目当てのジュースのボタンを押した。
「ドサッ」
缶ジュースが出てくるはずなのだが、重たい物が落ちたような音が聞こえた。
Sさんは不思議に思い、取り出し口を覗き込んだ。
そこには、真っ黒で毛むくじゃらの塊があった。
2つの目のようなものが、じっとSさんを見つめている。
恐怖に襲われたSさんは、何も取らずにバンガローに向かって走った。
バンガローに戻ると、息を切らしながら友人たちに自販機で見たものを話した。
「真っ黒でっ、毛むくじゃらでっ、目が2つあった!」
友人たちはSさんに落ち着くように言った。
最初はSさんの話を信じなかったが、Sさんの真剣な様子を見て一緒に自販機を確認しに行くことになった。
Sさんと友人たちは恐る恐る自販機に近づき、自販機の取り出し口を見た。
しかし自販機の中に入っていたのは、Sさんが選んだジュースだけだった。