小学校の帰り道、私はいつも近道のために裏山にある竹薮を抜けていた。
鬱蒼とした竹林は昼でも薄暗く、少し不気味だったが近道できるメリットには代えられなかった。
ある日、いつものように竹薮を歩いていると、奇妙な物音に気づいた。
ガサガサと竹が揺れる音、そして何かが蠢くような気配。
立ち止まって耳を澄ますと、微かに子供の笑い声が聞こえた気がした。
好奇心に駆られ音のする方へ進んでいくと、竹林の奥に小さな祠を見つけた。
祠の前には色あせた赤い風車が落ちていた。
それを拾い上げると、突然冷たい風が吹き抜け辺りがさらに暗くなった。
次の瞬間、足元に違和感を感じた。
見下ろすと、地面から無数の手が伸びてきて私の足を掴もうとしていた。
慌てて逃げようとすると、先ほど聞こえた子供の笑い声が今度はハッキリと聞こえてきた。
「遊ぼうよ、遊ぼうよ」
声の方向を見ると、祠の横にぼんやりと子供たちの姿が見えた。
彼らは皆青白い顔をしていて、虚ろな目でこちらを見つめていた。
恐怖に駆られた私は夢中で竹薮を駆け抜けた。
なんとか家にたどり着き、両親に一部始終を話したが信じてもらえなかった。
しかし、その日から私は毎晩、夢の中で子供たちの笑い声にうなされるようになった。
それから数年後、あの竹薮がかつて子供たちが神隠しに遭う事件が多発した場所だと知った。
そして、祠には神隠しに遭った子供たちの霊が祀られているという噂を聞いた。
あの日私が見た子供たちは、神隠しに遭った子供たちの霊だったのだろうか。