これはとある神社の神主から聞いた話。
数年前の夏、大学生が神社にやってきて、リュックサックから古びた木彫りの人形を取り出し、神主にこう頼んだ。
「この人形、処分してくれないか?」
話を聞いてみたところ、その人形は彼が最近骨董品屋で購入したものらしい。
アフリカの木彫りの民族人形で、素朴ながらも力強い存在感を放っていた。
だが、家に持ち帰ってからというもの、奇妙な現象が起こるようになったという。
「夜中、特に深夜1時を過ぎると人形が何かを喋り始めるんだ。
何を言っているのかはわからないけど、ボソボソと・・・とても不気味な声で・・・」
大学生は怯えた様子で処分を依頼した。
神主は人形を預かり、神社の倉庫に保管することにした。
その夜、神主は深夜まで事務作業をしていたのだが、ふと倉庫の方から声が聞こえてきた。
確かに何かを喋っているようだったが、言葉は聞き取れない。
声はかすれていてまるで老人のような声だった。
恐る恐る倉庫のドアを開けてみると、そこには昼間預かった人形が置かれている。
人形の目には、黒曜石のようなものが埋め込まれており、薄暗い倉庫の中で異様な光を放っていた。
そしてその人形の口は動いており、確かに何かを喋っているのだ。
神主は驚きながらも人形に近づき耳を澄ませた。
人形はしばらく何かを呟いた後、動かなくなった。
神主は背筋が凍る思いだった。
その後、神主は人形のことを調べてみたところ、どうやらその人形はアフリカのある部族が儀式に用いていたもので、祖先の霊や精霊が宿ると信じられているらしい。
そして取り扱いを誤ると、災いが降りかかるとも言われているんだそうだ。
効果があるかは分からないが、毎週一度、人形のために祈祷を行うことにした。
人形に宿る霊を鎮め災いを防ぐためだ。
効果はあったようで次第に人形が喋る頻度は減っていき、声も小さくなっていった。
今では人形はほとんど喋らなくなった。
しかし、今でも特定の日付が近づくと、倉庫から聞こえてくる不気味な声が聞こえる事があるそうだ。