夏の強い日差しが照りつける中、Rさんはドライブを楽しんでいた。
地方の道を気ままに走らせていると、古びた図書館が視界に飛び込んできた。
蔦が絡まり、外壁の塗装は剥がれ落ち、まるで長い間忘れ去られていたような佇まいだ。
「こんなところに図書館が・・・」
好奇心に駆られたRさんは車を駐車場に停め、図書館へと足を踏み入れた。
意外にも内部は広く、天井の高い空間には無数の本棚が並んでいる。
Rさんは驚きと共に、ワクワクとした気持ちで本棚の間を散策し始めた。
古い書物や珍しい専門書など、興味深い本が所狭しと並んでいる。
奥へと進むにつれ人の気配は感じられなくなり、静寂が支配していた。
やがて奥まった場所に一際古びた木製のドアを発見した。
ドアには黄色く変色した紙が貼られ読めない漢字が記されている。
お札のようにも見えるその紙は、このドアの先に何かがあることを暗示しているようだった。
「この先には何があるんだろう…」
Rさんは躊躇しながらドアノブに手をかけた。
軋む音と共にドアが開くと、中は薄暗く埃っぽい匂いが鼻をついた。
しかし、ここにも無数の本がぎっしりと棚に並んでいる。
Rさんはスマホのライトを点け、本の背表紙を眺めながら奥へと進んでいった。
するとかすかに何かが動くような音が聞こえてきた。
「ん?」Rさんは音の方向へライトを向けたが何も見えない。
音はさらに奥の方から聞こえてくるようだ。
Rさんがゆっくりと近づいていくと、薄暗い空間の先に黒い人影が本棚の前に立っているのが見えた。
人影は背を向けており、何をしているのかはわからない。
しかし、Rさんにはその人影から異様な雰囲気を感じ取った。
そして、その人影の周りからは何かが囁くような、意味不明の言葉が微かに聞こえてきた。
Rさんは全身に鳥肌が立った。
本能的に危険を感じたRさんは静かに後ずさりし、来た道を引き返した。
そして全速力で図書館を飛び出し、車に乗り込んで図書館を後にした。