これは知り合いのUさんから聞いた話。
Uさんは家から駅までが遠く、いつも近道のために墓地の中を突っ切って通勤していた。
ただ、残業で20時を過ぎてしまうとさすがに怖いので、遠回りをして帰っていたそうだ。
ある日、Uさんは会社の飲み会で遅くなってしまった。
最寄りのバス停を降りて時間を見ると、もう0時を回っていた。
いつもなら遠回りするところだが、その日は少し酔っていたこともあり、一刻も早く帰りたい一心で墓地を突っ切ることにした。
9月だというのに、墓地に入った途端、ひやりとした肌寒さを感じた。
それでも歩みを進めていると、背後から「ガタガタッ」とか「ゴロゴロ」という音が聞こえてきた。
なんだろう?と振り返ると、そこには台車に大きな段ボールを積んだ姿があった。
え?何?と見ていると、それを押す作業帽に作業着を着た人の姿も見えた。
こんな時間に何をしているのだろう?と疑問が浮かんだが、なぜか直視するのが怖く、Uさんはすぐに顔を前に戻して歩き出した。
しばらくの間「ガタガタゴロゴロ」という音はUさんのすぐ後ろをついてきた。
早く墓地から出たいと焦る気持ちと、得体の知れない恐怖に耐えながら歩いていると、突然音が止んだ。
不思議に思って恐る恐る振り返ると、そこには何もない。
台車も作業着の人も忽然と消えていたのだ。
何が起こったのか理解出来なかったが、怖くなったUさんは走って墓地を抜け出した。
それ以来、Uさんはどんなに遅くなっても墓地を通ることはなくなり、遠回りをして帰るようになったそうだ。