知り合いのAが体験した話。
金曜の深夜、Aは残業でへとへとになっていた。
もうすぐ0時、ようやく仕事が終わったAはほっとため息をついた。
「さすがにもう誰もいないか…」
薄暗いオフィスを後にし、Aはエレベーターで1階へ向かう。
深夜のオフィスビルは異様に静まり返っていた。
「…あれ?」
ふと、Aはロビーの一角に目を奪われた。
そこには薄暗い照明に照らされた奇妙な光景が広がっていた。
それはまるで廃墟となった遊園地のような一角だった。
色あせた遊具が並び、ところどころに壊れた人形が置かれている。
「なんだこれ…」
Aは恐る恐るその一角に近づいていく。
すると遊具の一つ、メリーゴーランドがゆっくりと動き始めた。
「ぎぃ…ぎぃ…」
不気味な音を立てながら回るメリーゴーランド。その馬に乗った人形たちは、まるでAを見ているかのようにこちらを向いている。
Aは背筋にぞっとするような悪寒を感じた。
「…誰?」
Aの声が静寂を切り裂く。しかし返事はない。
「…出てこい!」
Aは恐怖心を振り払おうと大声で叫ぶ。すると、メリーゴーランドの動きが止まった。
静寂が再び訪れる。Aは心臓が早鐘のように鼓動するのを感じていた。
「…これは疲れで夢を見ているんだ…」
Aは自分に言い聞かせるようにつぶやき歩き出す。
しかし次の瞬間、Aは足を止めた。
目の前には一人の少女が立っていた。
少女は白いワンピースを着て、長い髪をなびかせている。しかし、その顔は真っ青で、目は虚ろだった。
「…助けて…」
少女はかすかな声でそう言った。
Aは恐怖で体が震えた。しかし少女を助けようという気持ちが勝った。
「大丈夫だよ…こっちに来なさい…」
Aは少女に手を差し伸べる。少女はゆっくりとAに近づいてくる。
そしてAの手を取った瞬間、少女の体が消えた。
何が起こったのか理解できなかった。
ふと我に返ったAは急いで会社を出たそうだ。