友人は子供の頃、山間の小さな村に住んでいた。
村の外れには鬱蒼とした森が広がる山があり、そこには「入ってはいけない」と村人たちに言い伝えられている場所があった。
理由は定かではないが、その場所は昔から何かがいると噂され近づく者はいなかった。
ある夏の暑い日、友人は幼馴染みと山に探検に出かけた。
好奇心旺盛な二人は、村の言い伝えを無視してその禁足地へと足を踏み入れてしまった。
山道は険しく、木々の枝が絡み合い太陽の光もほとんど届かない。
二人は一体どんなところなんだろう、とワクワクしながら奥へと進んでいった。
しばらく歩くと道の脇に小さな祠を見つけた。
祠は古びていて、周囲にはしめ縄が張られ、何枚ものお札が貼られていた。
二人はその不気味な雰囲気に思わず立ち止まった。
その時、友人の幼馴染みが「うわっ」と声をあげて突然よろめいた。
何事だと見てみると、彼の足首に真っ黒い手が巻きついていた。
それはまるで子供の影のような形で、彼を引きずり込もうとしていた。
「うわああっ!何だこれ!」
と掴まれてる足を必死に動かしている。
友人は慌てて幼馴染みの腕を掴み、引っ張った。
黒い手は抵抗するように足にしがみついていたが、なんとか引き離すことができた。
すると引き離された黒い手は、スーッと地面に潜っていって消えてしまった。
二人はしばらく固まっていたが、友人が幼馴染を急いで引っ張って立たせ、一目散に山から逃げ出した。
その後、二人はそれぞれの親にその事を話してしまい、こっぴどく叱られた後、神社に集められてお祓いをしたそうだ。