私の友人はアウトドアが好きで、特にキャンプには目がなかった。
彼はゴールデンウィークの長期休みを利用して、一人で山奥へと向かった。
事前にキャンプ場を予約していなかった彼は、山道を車で走らせ良さそうな場所を探していた。
しばらく走ると山道から少し入った場所に、ぽっかりと開けた広場を見つけた。
木々に囲まれていて地面は比較的平ら、テントを張るには絶好の場所だった。
友人は車を停め、早速テントの設営に取り掛かった。
設営を終えると周辺の山で山菜採りを楽しむことにした。
リュックサックを背負い、山道を進んでいった。
しばらく歩いていると、草が生い茂っていたが前まで道があったんじゃないか?と思える脇道に気づき、好奇心からその道を進んでみた。
鬱蒼とした森の中を抜けると、視界が開けた場所に一台の廃車が放置されていた。
それは白い乗用車で、長年放置されていたのか車体は錆びつき、窓ガラスは割れてタイヤはパンクしていた。
友人は興味本位で車に近づいてみると、異様な光景を目にした。
車のボンネットやドアには何枚ものお札が貼られていたのだ。
お札は古びて色あせていたが、そこには普通じゃない雰囲気が漂っている。
友人は嫌な予感がして車から離れようとしたその時、車の後部座席からかすかに物音がした。
座席の布の上を重量があるものが移動するような、まるで何かが蠢いているような音だった。
恐る恐る後部座席を覗き込んだが何もいない。
しかし、さっきの音は気の所為ではない。
ゆっくりと後ずさりし、ある程度離れてから急いでその場から逃げ出してテントに戻った。
だが廃車とお札、そして車内で感じた気配が頭から離れず、友人はいてもたってもいられなくなり、すぐにテントをたたんで車に戻り、車を走らせて遠く離れた場所へと移動したそうだ。