知り合いのAとFから聞いた話。
AとFは大学時代の友人同士で、社会人になった今も、年に一度は一緒にキャンプに出かけるのが恒例行事だった。
今年は人里離れた山奥にある、廃墟となったキャンプ場を目的地に選んだ。
車で山道を進むにつれ周囲は暗くなり、木々の影が不気味にみえていく。
二人は車内で今までのキャンプの話や、今日はどういう事をしようなどと話していた。
ようやく元キャンプ場の駐車場に到着した二人は、車を降りて薄暗い森の中へと歩き出した。
やがてキャンプ場に辿り着いたのだが、さすがに放置されていた為設備は朽ち果てていた。
テントを張り終え、夕食の準備を始めた二人。
その時背後から奇妙な物音が聞こえた。
振り返ると、暗闇の中に人影のようなものが立ち尽くしていた。
A「俺たち以外にもキャンプしにきた人がいるのかな」
F「え?どこにいるの?」
A「ほら、そこだよ」
そう言いながらAは懐中電灯を手に、人影が立っていた場所へ向かう。
しかしそこには誰もいない。
おかしいなと言うAに、焚き火で木の影が揺れて人がいたように見えたんじゃないか?とFが言う。
Aは納得いかない様子だったが、やがて食事を取りキャンプを楽しんだ。
やがて夜が更けてきたのでテントに入り眠りについた。
どのくらいたったのか分からないが、Aは奇妙な夢にうなされた。
夢の中で暗闇の中を彷徨い、誰かに追いかけられているような感覚があった。
すると突然、テントを揺らす激しい音がし、Aは目を覚ました。
Fも同様に目を覚まし、地震か!?と驚いている。
二人が目を覚ますと揺れと音は治まった。
A「まさかとは思うけど野生動物が来たのか?」
F「え?この辺にはそんなのいるとは書いてなかったぞ」
しばし二人は恐怖に包まれたが、聞き耳を立て周りに何かいないかを探った。
音が何もしない事を確認すると、恐る恐るテントを開けて外を覗いてみた。
やはり何もいない。
二人は安堵の溜息をついた。
時間を見ると午前2時、まだ早いが何かあったら怖いので、二人は帰り支度をして朝になるのを待った。