怖い話と怪談の処

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トンネルの人影と囁き

私の友人の家族は、毎年夏になると車で数時間かかる山奥の故郷に帰省していた。

その途中の道に、地元で曰くつきの心霊スポットとして知られる古いトンネルがあり、トンネル内は薄暗く、じめっとした空気が漂いどこか陰鬱な雰囲気に包まれていた。

 

ある年の夏、友人の家族がいつものようにそのトンネルを通過していると、後部座席に座っていた幼い娘が突然泣き出した。

「ママ、怖いよ。あそこに誰かいる」

娘は震える声でトンネルの壁を指差した。

友人が見ると、薄暗い壁にぼんやりと白い人影のようなものが張り付いていた。

それは子供のような小さな人影で、服は汚れて破れており、顔は暗くてよく見えなかったが悲しそうな表情をしているように感じられた。

友人の夫は

「汚れが偶然そうみえるだけだよ、気のせい気のせい」

と取り合わなかったが、娘の怯え方は尋常ではなかった。

 

トンネルを抜けると娘はようやく落ち着きを取り戻したが、その後も「白い子がいた」と繰り返し呟いていた。

その日から娘は夜になると悪夢にうなされるようになった。

夢の中でもあのトンネルの壁に張り付いた白い人影が現れ、彼女をじっと見つめてくるという。

友人は心配になり、娘を病院に連れて行ったが特に異常は見つからなかった。

しかし娘の怯えは日を追うごとに増していった。

 

そしてある夜のこと。

娘が眠っている部屋から奇妙な音が聞こえてきた。

友人が様子を見に行くと、娘のベッドの横にあのトンネルで見た白い人影が立っていた。

「遊ぼうよ・・・一緒に来て・・・」

白い人影はかすれた声で娘に囁いた。

その声は寂しさと切なさを含んでいるかのようだった。

友人は恐怖よりも先にその人影に哀れな気持ちを抱いていたのだが、次の瞬間、白い人影はゆっくりと手を伸ばし娘の腕に触れようとした。

友人はとっさに娘を抱きかかえて逃げ出し、寝室の電気をつけた。

すると白い人影はパッと消えてしまった。

 

友人はあのトンネルには何かがあると思い、念のため娘を連れて近くのお寺でお経をあげてもらうことにした。

お寺では娘の身を案じた住職が丁寧にお経をあげてくれた。

それからというもの娘は悪夢を見ることもなくなり、白い人影が現れることもなくなった。

友人の家族はその後も毎年夏に故郷に帰省しているが、あのトンネルを通るたびにあの白い人影のことを思い出すという。