薄暗い登山道を一人登っていた私は、いつの間にか道を外れてしまっていた。
周囲を見渡しても見覚えのある景色はどこにもない。焦りと不安が募っていく。
日が傾き始め、辺りが暗くなり始めた。懐中電灯の明かりを頼りに何とか歩き続ける。しかし、足元は滑りやすく何度も転んでしまう。
疲れと恐怖で心が折れそうになった時、ふと山小屋の灯りが見えた。
希望に胸を膨らませ、私は足早に向かっていった。しかし近づいてみると、山小屋は廃墟となっていた。
壊れた窓から吹き込む風に、木製の扉がギシギシと音を立てる。
不気味な雰囲気に恐怖を感じながらも、私は意を決して山小屋の中に入った。
薄暗い室内には埃まみれの家具や道具が散乱していた。
奥の部屋で古い日記帳を見つけた。
そこには、かつてこの山小屋に宿泊した登山者の記録が記されていた。
しかしその内容はどれも奇妙なものばかりだった。
「山の中で奇妙な影を見た。」
「夜中に人の声が聞こえた。」
「山小屋から出られなくなった。」
恐怖で震えながら私は日記を読み続ける。
すると背後から物音が聞こえた。
振り返ると、そこには誰もいないはずなのに人影が立っていた。
影はゆっくりと私に向かって近づいてくる。
私は恐怖で声も出ずただ立ち尽くすしかなかった。
影は私の目の前に立ち止まり、不気味な声でこう言った。
「ここから出てはいけない。」
私は意識を失いそのまま倒れてしまった。
目が覚めると自分の家のベッドにいた。
夢だったのか?
しかし日記帳は私の手にしっかりと握られていた。
あの山小屋で何が起こったのか?どうやって家まで帰ってきたのか?
私は今でもその答えを知らない。
ただ親が言うには、夜遅くに帰ってきて、何も言わずに自分の部屋に行きそのまま眠ってしまったそうだ。
あの山小屋での体験の後、どうしてもあの小屋が気になってしまい、再びあの山を訪れた。
そしてあの山小屋を見つけた。
しかし前回とは様子が違い、外観がそこまで古くないし窓ガラスも扉も壊れていない。
扉を開けて中を覗いてみたのだが、しっかりと片付けられて廃墟とは思えない状態だった。