Fさんが残業で遅くなった時の事。
時刻は深夜0時を回っていた。
作業に区切りを付ける為、やってる作業を保存してソフトを終了した。
すると突然、事務室の電気が点滅し始めた。
最初はただの電気のトラブルだろうと思っていたのだが、コピー機の奥から微かな声が聞こえてきた。
何事かと耳をそばだてると、その声がはっきりと聞こえた。
「遅くまでお疲れさま。でももう少しで終わりだよね。」
Fさんは驚きと共に周りを見回すが誰もいない。
ただ機械の奥から聞こえるだけ。
同僚がいたずらで隠れてるか、携帯でも置いてあるのか?
とその声の元へ近づいて行く。
コピー機の近くに立つと、急に電気が消え真っ暗になり、Fさんが使ってるパソコンのモニターの光だけになった。
Fさんは驚いたが、同僚の誰かのいたずらだと思うようにし
「もう十分驚いたから、いたずらは止めて電気を付けてくれ」
と言った。
次の瞬間、冷たい手がFさんの肩に触れるような感覚が広がり、パソコンのモニターの光で薄っすらと見える部屋に、ぼやーっとした人の影が現れた。
Fさんの目の前に立つ影は、形がはっきりしていないが背広を着ているようだ。
「お疲れ様。これからもよろしくね。」
と影が囁くと、あたりに強烈な寒気が走り電気が点いた。
と同時に、先程まで目の前にいた影はもうどこにも見当たらなかった。
何が起きたのか理解できないが、Fさんは急いで事務室を出て帰宅することにした。
Fさんにこの話を聞いた時、一体何が「もう少しで終わり」なのか、そして「これからもよろしく」とはどういう意味なのかを考えてしまったが、怖くてFさんに問う事は出来なかった。