私が小学4年生の時の話。
夜中の2時頃、私はトイレで目を覚ました。
用を済ませて部屋に戻ろうとすると、台所から物音が聞こえた。
「誰?・・・兄ちゃん?」
私は恐る恐る台所へと向かった。
薄暗い台所には誰もいない。しかし確かに何かが動いたような音が聞こえたのだ。
キッチンの棚の隙間からこちらを見ているような視線を感じた。
私は息を潜ませ、じっと棚を見つめた。
「・・・誰?・・・そこにいるの?」
しかし何も答えはない。ただ、視線は確実に私に注がれている。
私は怖くて声も出なかった。
何とか勇気を振り絞り、3つ上の兄の部屋へと走った。
「兄ちゃん!起きて!台所!・・・何かいる!」
兄は私の慌てた様子を見てすぐに状況を察知した。
「落ち着け。何があったんだ?」
私は息を切らしながら、台所で体験したことを兄に伝えた。
兄は半信半疑ながらも、一緒に台所へと向かった。
二人が台所に近づくと、暗闇の中、棚の隙間から人間のような二つの目がこちらを見つめている。
「うわあっ!」
兄も私も思わず叫んでしまった。
叫び声を聞いて両親が寝室から飛び起きてきた。
「どうしたの!?何があったのよ!」
私たちは両親に、台所の棚の隙間から二つの目が覗いていると説明した。
父は最初は信じようとせず、
「きっと寝ぼけていただけだよ」
と言った。
しかし私たちの様子を見て、やはり何かおかしいと感じたのか、おっかなびっくり棚に近づいた。
父は恐る恐る棚の隙間を覗き込んだ。
「・・・何もいないぞ?」
父がそう言うと、棚の隙間から二つの目は消えていた。
両親は私たちが寝ぼけていたのだろうと言い、再び寝室へと戻っていった。
しかし、私たちは本当に二つの目を見た。
部屋に戻ってもその恐怖は消えなかった。
「・・・あれ、何だったんだろうね・・・」
兄が震える声で言った。
「・・・本当に見えたよね・・・」
私も声も震えた。
しばらくの間、互いに夜中に起きると一緒にトイレに行っていたが、その目を見たのはその日だけで、それからは1度も見ていない。