大学生のTは友人のSとFと一緒に、夜の21時過ぎに車で心霊スポットの廃墟に行った。
薄暗い廃墟の中はひんやりと静まり返り、不気味な空気が漂っていた。
懐中電灯の光を頼りに奥へと進んでいくと、埃まみれの古い家具や壊れた人形などが散乱しており、Tたちは背筋がぞっとするような感覚を覚えた。
しかし特に何も起こらず、心霊スポットはただの廃墟に過ぎなかった。
拍子抜けしたTたちは、何も起きなかったな~と自宅のアパートへと帰っていった。
SとFと別れ、Tは部屋に入った。
時間は1時手前。さて寝るかとベッドに横になり目を閉じた。
3時過ぎ、トイレに行きたくなり目が覚めた。
Tは眠い目をこすりながらトイレに向かった。
その時、台所の方で人の気配を感じた。振り返ると、そこには髪の毛が肩くらいまでのボサボサした人が立っていた。
Tのアパートにはたまに母親が訪ねてくることもあったので、母親が来ているのだろうと気にせずトイレに行った。
トイレから戻る途中、Tはふと疑問を感じた。
こんな時間に母親が何故いるんだ?
台所を覗いてみると誰もいない。不思議に思って玄関の靴を見てみたが、自分の靴しか置いていない。
一体あれはなんだったのだろうか?
Tは再び台所に向かい、声をかけた。
「お母さんいるの?」
しかし返事はない。台所は薄暗く誰もいない。
Tは恐怖に震えながら再びベッドに横になった。
しかし眠れない。あのボサボサした人のことが頭から離れない。
夜が明け、Tは友人たちを呼んで昨日の出来事を話した。
するとSは
「それは絶対にお母さんじゃないよ」
と真剣な顔で言った。
「だってお母さんならTが帰ってきたことに気づくだろうし。」
Fも
「私もSと同じ意見だよ。もしかしたらあの廃墟で何かを拾ってきたのかもね。」
と恐ろしいことを言った。
Tは、SとFの言葉に恐怖を募らせた。
念の為、TはSとFがいる間に母親に電話し確認してみたところ、
「そんな時間に行くはずないでしょ」
と言われた。
あのボサボサした人は一体誰だったのか?そして何故Tの部屋にいたのか?
あのボサボサした人の正体を知りたいという気持ちと、再びあの恐怖を味わいたくないという気持ちの間で、Tは今日も不安を抱えている。