大学生のFは登山が趣味だった。
ある日、Fはいつもと違う山に挑戦することにした。
それは人里離れた奥地にあり、難易度が高いことで知られる山だった。
Fは朝早く登山を開始し、順調に山頂を目指していた。
しかし午後になると天候が急変し、濃霧が立ち込めて視界が悪くなった。
Fは道に迷い遭難してしまった。
日が暮れ始め焦りが募る。
その時、彼は偶然洞窟を見つけた。
雨宿りがてら、洞窟の中で一夜を明かすことにした。
Fは行動食を食べ、水を飲んでから横になると、疲れ果てていた為すぐに眠りに落ちた。
深夜、ふと目を覚ましたFは、洞窟の奥の方から声が聞こえたような気がした。
誰かいるのだろうか?
自分が寝ている間に他に人が来たのかと思い、懐中電灯を照らしてみると、確かに奥の方で人影が動いていた。
試しに「こんばんは」と声をかけてみたところ、低い声で「こんばんは」と返事があった。
「どこから来たのですか?」
と尋ねてみたが何も返答がない。
疲れて寝ちゃったのかな?と、その人影が見えたあたりへと進んでいった。
しかしそこには誰もおらず、リュックやボロボロになった衣服が散乱していた。
背筋がぞっとするような恐怖を感じ、洞窟の出口へと走り出した。
それからは夜が明けるまで出口付近で震えながら待っていた。
夜明けとともに急いで下山し、山の管理者に報告した。
管理者はその話に驚きすぐに捜索隊を結成した。
どうやらその遭難者は、数年前から行方不明となっていた登山者のものだったそうだ。