知り合いのTさんから聞いた話。
Tさんは週末を利用して、友人たちと一緒に山奥のキャンプ場へ出かけた。
そこは木々が茂り、静かで落ち着いた場所だった。
到着した初日はキャンプファイヤーを囲み、楽しいひと時を過ごした。
翌日の朝、Tさんと友人たちはキャンプ場の近くを探索することにした。
地図を見てみると、キャンプ場の周辺には川と川を渡る為の古びた吊り橋が描かれている。
「行ってみようか」と誰かが言い出し、みんなで吊り橋へと向かった。
その吊り橋に到着してみると、観光客が少ないためか長い間誰も管理していないらしく、ボロボロの木材と錆びた鎖でできていて、見るからに危なそうだった。
しかし、Tさんたちはスリルを楽しみながら一歩一歩慎重に進んでいった。
吊り橋の真ん中まで来た時、突然風が強くなり橋が大きく揺れた。
「うわっ、凄い揺れる。こええええっ」
と誰かが言っている。
Tさんは橋の揺れに必死に耐えながら、ふと下を見た。
橋の下の方の水辺に何かが見える。
「橋の下に何かいる!」
Tさんは友人たちに叫んだ。
彼らも下を見てその影を確認した。
影はまるで人の形をしていて橋の下を漂っている。
皆でしばらく眺めていると、その影は徐々に橋の下から浮かび上がり、だんだんと近づいてきた。
「戻ろう!」と誰かが叫び、全員が急いで引き返そうとした。
しかし、その影は橋の両端に向かって動き出し、逃げ場を塞ごうとしているように見えた。
Tさんたちは怖くなり、急いで橋を渡り切ろうとした時、その影がTさんたちを逃すまいと手のようなものを伸ばしてきた。
その時、メンバーの一人がカバンを漁り始め、カバンから何かを取り出して影に向かって振りかけた。
影は一瞬苦しむような動きを見せた後、霧のように消滅した。
Tさんたちは急いで橋を渡り切り、何とか安全な場所に辿り着いた。
息を切らし、足がガクガク震えたTさんたちはその場に座り込んだ。
「何だったんだ、今の…」と誰かが息も絶え絶えに言った。
全員同じく息が荒く、しばらく何も言わない。
やがてTさんが友人に「さっき何を振りかけたんだ?」と聞くと
「ああ、ほら、幽霊には塩って言うだろ?だから塩を振りかけたんだ」
と言った。
皆それぞれに塩って本当に聞くんだと驚いた。
しかしまた変なのが来たら困るので、Tさんたちは急いでキャンプ場に戻ると帰り支度をして帰ったそうだ。