雪の降る夜、私は友人と二人で山近くの道を車で走っていた。
道の端にはだいぶ雪が積もっているためか、他に走っている車は無くガラガラ。
しばらくすると私たちは山間部に入り、視界が悪くなっていた。
雪は強くなり、路面も真っ白になり始めていた。
カーブを曲がると突然車の前に人影が現れた。
私は急ブレーキをかけ、車は間一髪で人影にぶつからずに止まった。
その人は雪まみれの帽子と白い服を着て、こちらに向かって立っていた。
「大丈夫ですか?」
私と友人は車から降りて人影に声をかけた。
しかし人影は何も答えず、ただじっとこちらを見つめているだけ。
その人の顔は雪で覆われている為かよく見えない。
友人が片手で口を覆い、私にしか聞こえないようにして小声で喋りかけてきた。
「なあ、この人なんか変じゃないか?」
確かにおかしい、雪の降る中こんな山道にいるし、話しかけても何も答えず微動だにしない。
私は恐怖を感じ、友人と車に戻ろうとした。
大丈夫そうなら行きますね、と言おうとした時、突然目の前にいたその人がフッと消えた。
友人と一体何が起きたのか分からず固まっていると、その人が立っていた所に赤いハイルールが置いてある。
ハイヒールはだいぶ古いのか、かなり汚れているようだ。
なんだか分からないけど恐怖に絶えられず、友人と急いで車に乗り込み車を走らせた。
友人と何だったんだ今の!?幽霊なのか!?と話し合っていると、突然吹雪になり目の前が見えなくなってしまった。
危ないので車を端に寄せ、収まるのを待つ事にした。
車の中で待っていると、私は奇妙な音に気づいた。
それは微かなうめき声のような音。
私と友人は音のする方を見たが雪以外何も見えない。
雪や風の音がそう聞こえたんだろうという事にした。
ずっと待ってるだけなのは暇なのでラジオを付けてみたのだが、ザザーというノイズ音しか入らない。
ラジオを切り、友人とたわい無い話をしていると、今度は車の窓ガラスをノックをする音がする。
え?と窓を振り返るが何もいない。
これも友人と気のせいだ気のせい、と言って気にしない事にした。
そのノックをするような音は私が座る運転席側からしたり、助手席に座っている友人の方の窓からも聞こえてきた。
二人共耳を塞ぎ目を瞑った。
やがて絶えられなくなり、私は
「ごめんなさい!すいませんが乗せる事も助ける事もできません!」
と叫んだ。
すると音が止んだ。
え?と思って恐る恐る目を開けると、さっきまでの吹雪が嘘のように止んでいる。
しばらくボーっとしていると、友人が
「なんだか分からないけど早く帰ろうぜ!」
と言ったので我に返り、車を走らせて山道を降りた。
その後は途中でコンビニに寄って飲食物を買って家に帰り、朝まで友人とその出来事を忘れるようにゲームをして騒いだ。