小学校6年生の夏、子供会のキャンプで少し離れた山に行った。
これはその時、夜に肝試しをやった時の出来事。
その肝試しは学年混ぜこぜで、男女6人くらいのグループを組み、宿泊所からすぐ近くの山の中腹にある廃屋まで行き、その中に置いてある子供会のバッジを取ってくるという内容だった。
ただ低学年は危ないという事で子供のグループではなく、保護者が同伴するグループ。
俺は脅かす役だったので、道の途中で飛び出して驚かそうかとも思ったが、そんなありきたりなのより廃屋で仕掛けを作って脅かす方が面白いかも、と考えた。
急いで山道を駆け上がり廃屋に辿り着いたとき、なにやら廃屋の中から物音がしている事に気がついた。
そのとき俺は、きっと役員さんが廃屋で脅かすつもりだな…と思ったので、なるべく音を立てないようにその音がする方に近づき、ガラスが既に付いていない窓から中を覗いてみた。
廃屋の中は暗いが、月明かりのおかげで薄っすらと見える。
音がする当たりをよく目を凝らしていると、そこにいたのは役員さんではなく、犬のような動物が何かを食べているようだ。
うわ、野犬か?と思いしばらく見ていたが、後から来るやつが襲われたらヤバくね?追っ払った方がよくね?という考えになり、周りを見渡し、落ちていた石をいくつか拾うと、その犬らしき動物に向かって投げた。
しかし犬の近くに落ちてしまい、その犬が音の方を見るために顔をあげた。
暗くてよく分からないが、その頭の形がどうみても犬に見えなかった。
思わず「うわっ」と声をあげてしまった。
その犬がこっちを振り向いた。
人の顔が付いていた。
びっくりして固まっていると、その人の顔をした犬はこちらを睨みながら舌打ちのような音をたて、廃屋の裏の方に走って行ってしまった。
ガクガクと足が震えて座り込んでしまったが、これってヤバイんじゃないのか!?と思い、震える足でなんとか元来た道を引き返し皆がいる所に戻った。
すると親や役員さん、クラスメイトが寄ってきて「良かった、無事だった」等と言っている。
どういうことだろうと思っていると、どうやら野犬がいるので危険だから中止にしよう、と直前に決まったそうだ。
直前って遅すぎるだろって思ったけど、今見てきた事を混乱した頭で伝えたが、野犬がいるという事は伝わったけどそれが人の顔をしていた、という事は伝わらなかったというか、信じてもらえなかった。