私が何年か前に体験した話。
その日は秋の終わり頃で、深夜の仕事帰りにいつもの道を歩いていた。
街灯がポツポツと灯る静かな夜道、帰り道にある家はほとんど電気が消えている。
公園に差し掛かった時、何気なく公園を見ていると、視界に入ったブランコが音を立てて揺れている。
「キィー…キィー…」
こんな深夜に誰がいるんだろう?
仕事帰りの疲れでブランコに座っているのだろうか?
そう思いながら目を凝らしたのだが、ブランコには誰も乗っていない。
風で揺れているのかと思ったが、2つあるブランコのうち揺れているのは1つだけ。不自然な光景に足が止まった。
しばらく見入っていると、黒い人影がブランコに浮かび上がってきた。
公園の周りは街灯で照らされているのにその人影だけは闇に溶け込み、顔や服装が真っ黒だった。
これは見てはいけないものだ…恐怖を感じた私は、心臓が早鐘のように鼓動するのを抑えながら早足で公園を立ち去った。
公園からどのくらい離れたか分からないが、気がつくと背後から誰かが歩く音が聞こえる。
公園での出来事があったので怖かったが、確認せずにいるのはもっと怖かったので振り返った。
だがそこには誰もいない。
きっと疲れから幻覚や幻聴が聞こえたのだろう。
そう自分に言い聞かせまた早足で歩き出した。
しばらく歩いていると、また背後から歩く音が聞こえてきた。
恐怖に駆られ私は走り出した。
家の近くまで来た時、もし後ろから付いてきていたら…と恐怖で足が止まった。
恐る恐る振り返り後ろを確認する。
誰もいない。念の為しばらくその場で立ち止まっていたが、足音も聞こえない。
私は急いで走りながら家に辿り着き、息を切らしながら家の中へと駆け込んだ。
あの黒い人影は何だったんだろうか?