昔、私がまだ幼い頃、私の家は小さな村の中にあった。
我が家の隣には独り暮らしのおじいさんが住んでいた。
おじいさんはいつもニコニコしていて、不思議な話もしてくれたので子供たちには人気者だった。
ある夏の日、私は縁側で夕涼みをしていると隣のおじいさんが我が家の門から声を掛けてきた。
「おや〇〇君。今日は涼しいね」
「うん、今日は風が気持ちいいね」
おじいさんは私の隣にやってきて隣に座り、世間話を始めた。
しばらくしておじいさんに、何か不思議な話聞かせてとせがんだ。
うーん、不思議な話か~、としばらく考えた後こう言ってきた
「これはこの村に昔から伝わる不思議な話なんだ」
おじいさんは深呼吸をして語り始めた。
「昔々、この村には奇妙な生き物が住んでいたというんだ。
その生き物は夜になると現れ、村の人々の家畜を襲う。
村人たちはその生き物を『影』と呼んでいた。」
「何で影って言うの?どういう姿をしているの?」
私は恐る恐る尋ねた。
「影は誰も見たことがないんだ。
ただ夜になると家畜の鳴き声が聞こえ、翌朝には家畜がいなくなってる。
村人たちは影が家畜を攫って食べていると恐れていたんだ。」
私は背筋がぞっとするような感覚を覚えた。
「え?攫って食べちゃうの?」
「そう、ある人が夜に家畜が騒がしいので何事だと戸を開けてみたところ、イノシシのような見た目をした黒い動物のようなものがいたそうだ。
その人は大声をあげて叫んだ。
するとその影は山の方に凄い速さで走っていって消えてしまったそうだ」
私は怖くなってしまった。
するとおじいさんはこう言ってきた。
「ここ数年は影の被害は聞いてないから大丈夫。
しかしいつまた現れるかわからないから、夜になったら外に出ちゃ駄目だぞ」
おじいさんはニコっと笑いながら私の頭を撫でてくれた。
「〇〇君、もし夜に影を見かけたとしても絶対に近づいてはいけないよ」
そう言ったあと、おじいさんは空を見つめながら水筒を取り出し、お茶飲むか?と言ってきた。
私はおじいさんの話に恐怖を感じながらも、どこか心惹かれていた。