友人が大学時代に体験した話。
薄暗い山道を下山中、偶然廃寺を見つけた。
気になったので中も見てみようと廃寺に入っていった。
朽ちかけた門構え、苔むした石段、荒れ果てた本堂。
ひんやりとした空気と静寂が、異様な雰囲気を漂わせている。
好奇心と恐怖心の間で揺れながら、一歩ずつ本堂へと近づいていく。
ギシギシと音を立てる扉を開け中に入ると、そこには埃まみれの仏像と薄暗い空間が広がっていた。
突然背後から冷たい風が吹き抜けた。
振り返ると本堂の奥から人影がこちらに向かってくる。
近づいてくる人影は老婆の姿をしていた。
老婆は真っ白な顔で、鋭い眼光をこちらに注いでいる。
「出ていけ…」
呆然としていると、老婆はまた本堂の奥へ戻っていった。
色々と疑問が湧いたので老婆を追いかけて本堂に入ったのだが、真っ暗闇。
こんなところよく明かりも無しに進めるな、と思いながらライトを付け周りを照らしてみる。
しかし本堂の中には他に進める場所は無いし、隠れられそうな場所もない。
なのに先程の老婆が見当たらない。
友人はそこで怖くなり、引き換えして下山したそうだ。