大学生の知り合いAから聞いた話。
夏休みのある日、Aは友人S、Eの3人で日本海側の海の近くのホテルに泊まった。
昼間は近くの海で泳ぎ、夜はホテルで海の幸を堪能した。
温泉に入り、部屋に戻ってカードゲーム等で遊び、気がつくと0時近くになったので寝る事にした。
Aたちは、昼間に泳いで遊んでいて疲れていた為すぐに寝てしまったそうだが、突然Sに揺り起こされた。
時間を見るとまだ午前2時。
「何だよ、まだ2時じゃないか」とAが言うと、SはEも起こした後にこう言った。
「廊下からビチャ、ビチャという歩く音と、水がピチャピチャ滴る音がずっとしてる。」
と言う。
興味を持った3人は、音をたてないように廊下側のドアに近づき、静かに耳を澄ました。
すると、確かにSの言う音が聞こえてくる。
海に遊びに行った人が濡れたまま歩き回ってるとも思えず、3人とも恐怖を感じ始めた。
Sは「開けて見てみるか?」と言ったが、AとEは「変なのがいたら怖い」と拒否した。
しかし何の音か気になるのは確かで、このままでは気になって眠れない。
そこで、音が通り過ぎて行った時にドアを開ける事にした。
数分後、音が近づいてきた。
Aたちは息を潜ませ、ドアノブに手をかけた。
そして音が部屋の前を通過して少し離れたであろうという時、ゆっくりとドアを開けた。
常夜灯に照らされた廊下。
そこに見たものは、びっちょりと濡れているであろう髪や衣服をきた人だった。
歩き方は左右にフラフラ揺れながら歩いている。
見える限りの肌も肌色ではなく、青紫のように見える。
Aたちは恐怖のあまり叫び声をあげてしまった。
するとその濡れた人はこっちを向いた。
顔が明らかに生きている人とは思えない程青く、膨れている。
それとほぼ同時に他の部屋でもドアが開き、その部屋からも叫び声が聞こえてくる。
さらにびっくりしたであろう他の宿泊客も、何が起こったのかと廊下へ出てきたのだが、その人たちには何も見えていないらしく、私たちや次に見た人たちが何を騒いでいるのか分からない様子だった。
Aたちがその事を説明しようとしたが、その時には濡れた人はどこにも見当たらなかった。
その後、濡れた人を見たAたちやそれを見た客たちはホテル側に問いただしたのだが、ホテル側は
「そのようなものは今まで見た事がないし、聞いたこともない」
と言った。
しかしAたちは納得しなかった。
Aたちが見たものは紛れもなく生きてるとは思えない人だった。
結局収集が付かない状態になっていた為か分からないが、Aたちやそれを見た宿泊客に内緒ですよ、という事で宿泊費は半額にしてもらい、お土産も持たされたので無理やり納得したそうだ。