知り合いのFさんから聞いた話。
Fさんは子供の頃、近所の子供たち7人くらいでよく遊んでいて、その日は地域にある神社へ向かった。
神社に集まったFさんたちは、だるまさんが転んだをして遊び始めた。
何回かやっていた時、Fさんが鬼の出番になった。
「だるまさんが~、ころんだっ!」
Fさんが振り向くと誰も動いていない。
もう一度、「だるまさんが~」と言った時、フェイントをかけてそこで振り向いた。
すると何人かの子供が動いたので、その子達を呼び寄せる。
皆ワーワーキャキャー騒いでいる。
そこでまたフェイントをかけて振り向いた時、皆の後ろの方にある森の木の方で「ガサッ!」と音がした。
皆何事だ?と振り向き、動物だったら怖いという事で皆Fさんの方に走ってきた。
Fさんたちが黙って見続けていると、木の影から何かが覗いている。
「なんだあれ」
Fさんがそう言うと、木の影からゆっくりと何かが姿を現した。
それは古ぼけた赤っぽい着物を着た女の子だった。
女の子は長い黒髪を垂らし、真っ白な顔には目鼻口がない。
子供たちは恐怖で声も出ない。女の子はFさんたちの方へゆっくりと歩き始めた。
「逃げよう!」
誰かが叫び、子供たちは一斉に逃げ出した。
Fさんも後ろを振り返りながら逃げた。振り返ると女の子はFさんたちを追いかけてくる。
Fさんたちは必死に逃げた。神社を飛び出し、住宅街を駆け抜けた。
女の子はFさんたちのすぐ後ろまで迫っている。
Fさんはもうダメだと思った。
その時、Fさんの家の前にある公園にたどり着いた。
「ここに入ろう!」
Fさんが叫び、子供たちは公園に飛び込んだ。公園に入った時に確認すると、女の子はいつの間にかいなくなっていた。
子供たちは公園のベンチに座り、息を切らした。
「あれは何だったんだろう?」
誰かが尋ねたが誰も答えは知らない。
Fさんたちはしばらく公園で話し合った後、それぞれ家へと帰っていった。
次の日、Fさんの近くの公園に、昨日の遊びに参加していた子供たちが集まっていた。
「ねえねえ、昨日神社で見たの、あれって何だったんだろう?」
一人の女の子が尋ねた。
「あれは、ノッペサマだよ」
別の男の子が答えた。
「ノッペサマって?」
「顔のない妖怪だよ。普段は出てこないんだけど、たまに子供にだけ見えるんだ。昨日みたいに楽しそうに遊んでいる子供を見ると、つい出てきてしまうんだって」
男の子は、自分の祖父から聞いた話を子供たちに話した。
「でも、じいちゃんもよくわからないって言ってたんだ。ノッペサマを見た子供の中には、行方不明になった子もいるらしい。視力を奪われた子もいるって噂もあるんだよ」
男の子の話に、子供たちは怖がった。
「じゃあ、昨日見たあの女の子はノッペサマだったの?」
Fさんが尋ねた。
「わからないけど、そうだとしたら僕たちも危なかったね」
それから子供たちの中には、親に子供だけで神社に行かない事って言われた子もいたそうで、他の子も子供だけで神社に行くことはなかった。
Fさんは今でもあの日の夢を見る事があるそうだ。
夢の中で女の子は、Fさんに向かって手招きをしてくる。
「おいで…おいで…」