夏休みに入ったばかりの7月の事。
大学のサークル仲間5人、A子、B美、C香、D奈、E子は、海辺のキャンプ場に来ていた。
昼間は海水浴やビーチバレーを楽しんだ彼女たちは、夜になると砂浜に焚き火を囲んで、怪談話を始めた。
「この近くには、曰くつきの岬があるって知ってる?」
地元出身のC香が、意味ありげに話を切り出した。
その岬はかつて海難事故が多発した場所で、今でも幽霊が出るという噂があった。
「えー、怖い! どんな幽霊が出るっていうの?」
D奈が身を震わせながら尋ねると、C香は続けた。
「夜中に岬に行くと、白い服を着た女の人が立っているんだって。 そして、その女の人に近づくと、突然姿を消すらしい・・・」
C香の話を聞いて5人は少し怖くなった。
しかし好奇心の方が勝り、彼女たちはその岬に行ってみることにした。
岬はキャンプ場から歩いて10分ほどの距離にあった。
あたりは真っ暗で、波の音だけが響いていた。
彼女たちは懐中電灯を手に、恐る恐る岬の先端へと向かった。
すると、C香の言った通り、白い服を着た女の人が立っていた。
彼女は海に向かって立ち尽くしており、5人に気づいている様子はなかった。
「あ・・・あれじゃない?」
E子が震える声で言うと、A子はゆっくりと女の人に近づいていった。
そして彼女に声をかけようとした瞬間、女の人はくるりと振り返った。
5人は息を呑んだ。
女の人の顔は長い髪で隠れて見えなかったが、彼女は口を開き何かを言おうとした。
次の瞬間、焚き火の火が突然大きくなり、女の人の影が大きく伸びた。
その影はまるで巨大な怪物のように、5人を飲み込もうとしているかのようだった。
5人は悲鳴を上げ一目散に逃げ出した。
そしてキャンプ場に戻ってからも、しばらくの間、彼女たちは恐怖で眠れなかった。
次の日、5人は岬に行ってみたが女の人の姿はどこにもなかった。
ただ、砂浜には大きな足跡が残されていた。
それは人間のものとは思えないほど、大きくて深い足跡だった。