梅雨が明けたばかりの初夏の夕方、大学生の3人組、M、T、Kは、ネットで見つけた廃村の墓地へと向かっていた。
Mの運転する車で、彼らは廃村があるという山奥へと進んでいった。
「本当にここに廃村があるのか?」
Tが後部座席から前の二人に問いかける。
「ああ、ネットで見た情報だとこの先にあるらしい。気味悪いけど興味あるだろ?」
Kがスマホの地図を見ながら答えた。
「まあな…肝試しにはうってつけだな。」
Mは運転しながら笑った。
車は道なき道を進み、やがて廃村にたどり着いた。
到着した時はまだ夕方で辺りは静まり返っていた。
彼らは車を降り、廃村の様子を見回した。
「ここが廃村か…確かに誰もいないな。」
Mが言う。
「墓地はどこだ?」
Tが尋ねると、Kが地図を見ながら指差した。
「あっちの方だ。もう少し奥に入る必要があるみたいだ。」
廃村を一通り見て回った後、三人は近くのファミレスに行き、夜が来るのを待つことにした。
ファミレスで夕食をとりながら彼らは廃村の噂話に花を咲かせた。
「本当に幽霊とか出るのかね?」
Tが言うと、Mが笑って答えた。
「それを確かめるために来たんだろ?」
やがて夜になり、再び廃村へと向かった。
今度は懐中電灯を手にして墓地を目指すことにした。
「さあ、行くぞ。」
Mが先頭に立ち、三人は廃村の奥へと足を踏み入れた。
懐中電灯の明かりだけが頼りの中、彼らは墓地への道を進んでいった。
「静かすぎて気味悪いな…」
Tが呟く。
「大丈夫だって。」
Kが言うが、その声にも少しの緊張が混じっていた。
やがて古びた墓石が見え始めた。
「ここだな…」Mが言うと、三人は墓地の中央に立ち止まった。
古い墓石が乱雑に並び、その多くが倒れていたり苔むしていたりした。
「やっぱり気味悪いな…」
Tが再び呟いたその時、突然どこからともなくすすり泣きの声が聞こえてきた。
「おい、今の聞こえたか?」
Tが震えながら言った。
「気のせいだろ?」
Mが答えるが、その声にも動揺が感じられた。
するとKが突然叫んだ。
「あれを見ろ!」
Kが指差す方向に懐中電灯を向けると、そこには誰かが立っていた。
その人は古びた着物を着た女性だった。
彼女はじっと三人を虚ろな目で見つめている。
廃村じゃない墓地ならたまたま来ていた人という事になるが、ここは廃村、しかもその女性は電気も点けずにずっとそこにいた事になる。
どう考えても普通じゃない
「うわああああ!」
Mが叫び、三人は一斉に逃げ出した。
懐中電灯の光が揺れ、足元が不安定な中で何度も転びそうになりながら、廃村を抜け出した。
抜け出したところで振り返ってみたが、追ってきてはなさそうだった。
車に辿り着き急いで乗ったあと、走りながらさっきみたその事について色々話し合ったが、あんな山の中にライトも持たずに一人で来るのはおかしい。
幽霊じゃなかったにしろ普通じゃない、という事になった。