久しぶりに大学時代の友人たちと再会し、登山をした日の事。
F、Y、Eの3人は、それぞれ社会人となり、忙しい日々を送っていたが、この日は特別な計画があった。
大学時代によく行っていた山に登るため、朝方に駅で待ち合わせしていた。
「久しぶりだな、みんな!」
Fが笑顔で声をかけると、YとEも嬉しそうに頷いた。
彼らは久しぶりの再会に興奮しながら電車とバスを乗り継ぎ、目的の山へと向かった。
山に到着したのは午前中のまだ涼しい時間帯だった。
3人は山の景色を楽しみながら登山を開始し、途中で休憩を取りながら、お互いの近況を語り合い、楽しい時間を過ごしていた。
登山道の半ばに差し掛かった頃、Eがふと立ち止まった。
「あれ、ちょっと待って…」
「どうした?」
Fが尋ねると、Eは指差した先を見つめている。
「あそこ見てみて。木の幹に何か変なものが見えるんだ。」
3人はEが指差す方に目を向けた。
そこには一本の大きな木があり、その幹に奇妙なものが浮かんでいた。
それはまるで人の顔が浮かび上がっているように見えたのだ。
「うわ、何だあれ」
Yが驚きの声を上げた。
近づいてよく見ると、その顔は木の自然な模様が偶然にもそう見えるが、シミュラクラ現象とは違い、しっかりとした瞼を閉じた目と鼻と口がある。
これは凄い、写真に撮ろう、とFがスマホを取り出して構えた時、木に浮かんだ顔が一瞬にして消えてしまった。
「あれ?消えた!?」
Eが驚きの声を上げた。
今まで確かに顔があったのに今は何もない。
3人は驚いたが、また見てみたいという事でしばらく待っていたが、いくら待っても浮かび上がって来なかった。