怖い話と怪談の処

いつも☆くださる方、ありがとうございます。このブログは知り合いから聞いた話や、思いついた話を載せていきます。完全に自作した話やAIにアイデアを貰った話、心霊系動画に使えそうな素材等を置いていきます。

深夜にやってきた顔のない客

深夜のコンビニで働くIさんは、いつものように夜勤に入っていた。

町外れにあるそのコンビニは、夜になると閑散として客足も途絶えがちだ。

時計の針が午前2時を指していた頃、店内はしんと静まり返っていた。

 

(休憩室に行こうかな…)

Iさんはレジのカウンターに肘をついてため息をついた。

その時だった。

自動ドアが開く音がし、冷たい夜風が一瞬店内に吹き込んだ。

「いらっしゃいませ」

反射的にIさんは顔を上げてドアの方を見た。

そこに立っていたのは一人の男性客。

黒いフード付きのパーカーを着て、フードを深くかぶっているため顔はよく見えない。

怪しい人だな。Iさんはそう思いながら目をレジに移した。

男性は無言で店内を歩き回り、棚の商品をじっと見つめている様子だった。

Iさんはその動きを目で追いながら、どこか不自然な雰囲気に気づいた。

普通、夜中にコンビニに来る客は急いで必要なものを買っていく。

しかしこの客は目的の商品がどこにあるのか分からないように、ゆっくりと色んな棚を見ながら歩き続けていた。

 

やがてその男性がカウンターにやって来た。

手に持っているのは缶コーヒー一つだけ。

Iさんはレジを打ち始め、ふと顔を上げたその瞬間凍りついた。

(顔が…ない)

確かにそこに立っているはずの男性のフードの中は、暗闇しか見えなかった。

まるでその部分だけが黒い穴のように何も存在していない。

「ま、◯◯円になりますっ」

震える声で何とか値段を言う。

その瞬間、男性は静かにポケットから財布を取り出し、無言で500円玉を差し出した。

Iさんはそれを受け取りレシートとお釣りを渡そうとしたが、男性はそれを無視して店の外へと出て行った。

 

ドアが閉まり、店内に再び静かになった。

Iさんはどっと汗が吹き出し、その場に座り込んでしまった。

(今のは何だったんだ?何で顔が見えなかったんだ?)

いくら考えても答えは出ない。

 

その後、Iさんは他の店員にその出来事を話してみたが、そんな客は見た事がないとか、暇すぎて寝てたんじゃないの?と言われるだけで誰も信じてくれなかった。