ある日の深夜、友人のYとK、そして私は飲み会の帰り道だった。
終電を逃してしまい、タクシーで帰ることにした。
街灯が少ない暗い道を歩きながら、運よくタクシーを見つけた。
黒いタクシーだったが、こんな時間に乗れるだけありがたいと思い、私たちは乗り込んだ。
行き先を告げると運転手は頷いただけで、こちらを一度も見ずに無言で走り出した。
途中、運転手さんに話しかけてみたが無言、その異様さに私たちの会話も次第に途切れていった。
窓の外を見ると、見慣れない道を走っていることに気づいた。
「ここ、どこだろう?」
とKが不安そうに呟いた。
「道を間違えたんじゃないか?」
とYも疑問を投げかけた。
私たちはまた運転手に話しかけたが、相変わらず無言のまま道を走り続ける。
次第に周囲の景色が変わり、異様な雰囲気が漂い始めた。
道には霧が立ち込め、森のように木々が並んでいた。
私たちはパニックに陥り、運転手に「止めてくれ!」と叫んだが、彼は一切反応しない。
車は走っているし危ない事は分かっているが、このままじゃヤバイ事になりそうだと思った私は
「ここで降りる!」
と言ってドアノブを引いたが、ドアはビクともしなかった。
YとKも同様に試みたがすべてのドアがロックされていた。
「なんなんだよこれ!」
とKが叫んだ。
すると突然車内に冷たい風が吹き込んだような感覚がした。
そして運転手の背中越しに見えるミラーに、彼の目が映った。
それは人間の目とは思えない、暗く深い闇のような瞳だった。
「私たち、どこに連れて行かれるんだ…?」
とYが恐怖に震えながら呟いた。
タクシーはさらに奥深く、不気味な道を進み続けた。
私たちはもうどうすることもできず、ただ震えるしかなかった。
しばらくすると運転手が低い声で何かを呟いた。
「ああ、生きてる人か」
そう聞こえた。
すると突然タクシーが止まり
「ここで降りてください」
と運転手が言ったのだが、その声は冷たく無感情だった。
私は開けられたドアから転がり込むように外に出た。
外に出た時、タクシーの会社名を見たが難しい漢字のような字で読めなかった。
3人が外に出るとドアが音もなく閉まり、タクシーは音もなく走り去っていき、暗闇の中に消えていってしまった。
ここはどこだ?と周囲を見渡したけど、そこは全然知らない場所。
急いでスマホを取り出してマップを調べてみたところ、県を1つ超えた所だった。
酔っ払ってタクシーの中で寝ちゃったのか?と3人で話したが、そんなはずがない。
近場のタクシーを呼ぼうかと思ったけど、さすがにもうこんな時間やってないだろう、というのと、もしやってても料金ヤバイ事になりそうだ。
という事でファミレスを探し、始発が出るまで時間を潰す事にした。
ファミレスで時間を潰してる間あのタクシーのことを調べたが、そんなタクシー会社は存在しないことがわかった。