知り合いのKさんが体験した話。
Kさんはその日、残業で帰りが遅くなってしまった。
帰宅してシャワーを浴び、ベッドに横たわるともう午前2時を過ぎていた。
スマホの画面を確認し、明日のアラームをセットして寝る準備をしていた。
するとその時、スマホが突然鳴り出した。
急いでスマホの画面を確認するが、着信画面には見知らぬ番号が表示されている。
こんな時間に誰だ?と不思議に思いながらも好奇心が勝り、Kさんは電話に出た。
「もしもし?」
しかし返事はない。
ただ、かすかに息遣いが聞こえるだけだった。
しばらく黙って待っていると、電話の向こうから女性の声がかすかに聞こえてきた。
「…助けて」
Kさんは驚いて身を起こした。
「誰?どうかしたんですか?」
しかし再び沈黙が続いた。
Kさんがもう一度呼びかけようとした瞬間、電話は切れてしまった。
何だったんだ?いたずらか?
Kさんは再びベッドに横たわり、眠ろうとしたがさっきの声が頭から離れない。
しばらくして再びスマホが鳴り、同じ番号からの着信だった。
Kさんは恐る恐る電話に出た。
「もしもし?」
今度は息遣いすら聞こえず、完全な静寂が続いた。
「一体誰なんだ?」
その瞬間、背後からかすかな囁き声が聞こえた。
「後ろを見て」
Kさんは全身に鳥肌が立ち、恐る恐る振り返った。
しかしそこには誰もいない。
Kさんは再びスマホに耳を戻したが、電話はすでに切れていた。
そのままスマホの画面を消し、布団に潜り込んだ。
翌日、Kさんはそのことを友人のSさんに話すことにした。
SさんはKさんの話を聞いて少し心配そうに
「それ、何かの兆しじゃないか?気をつけた方がいいよ。」
それから数日、Kさんは何事もなく過ごしていた。
しかしまたある夜、同じ時間に同じ番号からの着信があった。
Kさんは恐怖心を押さえながら、再び電話に出た。
「もしもし?」
再び女性の声が聞こえた。
「助けて」
Kさんは震える手でスマホを持ち、ゆっくりと後ろを振り返った。
だが、何も見えない。
Kさんはすぐに電話を切り、そのまま布団に潜り込んだ。
次の日、再び友人のSさんに話すと、
「もしかしたら視える人が見ると、本当にそこに誰かいるのかもしれない。
もしまた掛かってきたら『悪いけど僕には何も視れないし、助言をすることもできない、だから他に行ってくれ』と言うといい」
とアドバイスされた。
その夜、Kさんは再び電話がかかってくるのを待った。
午前2時、スマホが鳴り、同じ番号からの着信だった。
Kさんは恐る恐る電話に出た。
「悪いけど僕には何も視れないし、助言をすることもできない。
だから他の人のところに行ってくれ。」
電話の向こうはしばらくの沈黙の後、かすかな笑い声が聞こえ電話が切れた。
その夜以来、Kさんのスマホにはその番号からの着信は二度となかった。
しかし、Kさんは今でも時々深夜に目が覚めると、背後に誰かの気配を感じることがあるという。