これはある真夏の夜、0時を過ぎた頃に体験した話。
その夜、俺と友人のBは、大学の夏休みを利用してBの親が持っている山奥の別荘に泊まっていた。
昼間は川遊びやバーベキューを楽しみ、夜は涼しい風に当たりながらビールを飲んでリラックスしていた。
夜も更け、時計の針が0時を指す頃、俺たちは別荘のリビングで話し込んでいた。
周囲は真っ暗で、外の音はほとんど聞こえない。
そんな静寂の中、突然玄関の方からノックの音が聞こえた。
「コンコン」
二人とも一瞬何の音か分からず、お互いに顔を見合わせた。
「こんな時間に誰だろう?」
とBが呟いた。
山奥の別荘だから近所の人が来ることはまずない。
俺は少し警戒しながら玄関に向かった。
玄関に近づくと再びノックの音が響いた。
「コンコン」
俺は恐る恐るドア越しに
「どちら様ですか?」
と声をかけたが返事はない。勇気を出してドアを開けてみると、冷たい風が吹き抜けた。
外を見回しても誰もいない。心臓がドキドキしながらも、そのままドアを閉め、リビングに戻ってBにそのことを伝えた。
Bは少し不安そうな顔をしたが、特に何事もなかったのでまた話を続けることにした。
しばらく話しているとやがて眠くなり、寝る時間になった。
俺たちは同じ部屋のベッドにそれぞれ入り、深い眠りに落ちた。
深夜、ふと目を覚ますと廊下を歩く音が聞こえた。
Bがトイレに行ったのかと思い、気にせず再び眠ろうとしたのだが、その足音が次第に近づいてきて部屋のドアが静かに開く音がした。
「Bか?」と思いながら目を開けると、そこには白い服を着た女性が立っていた。
それは長い髪で顔はうつむいていた。驚きと恐怖で声が出なかった。
しばらく固まっていると、だんだんと顔が上がってきてそれと目が合ってしまった。
と同時にそれはスーッと消えてしまった。
俺は飛び起きてBを叩き起こそうBの方を向くと、Bはすでに目を開けて起きていた。
「お前も見たのか?」
と聞くと、Bは
「いや、俺も廊下を歩く音を聞いたんだ。あの音は2階から降りてきて、廊下の奥に消えたと思ったらまた戻ってきた。
その時、お前が起きたんだ」
と言った。
俺たちはお互いに顔を見合わせ恐怖で震え、とてもじゃないが眠れる気がしなかったので電気を付けてそのまま起きていた。
翌日、帰り支度をして急いで別荘を出た時、丁度地元の人が通りかかったのでその話をしてみたところ、昔その別荘近くで事故で亡くなった女性がいる、との事だった。