Oさんは深夜の事務所で残業している最中、同僚のNさんと二人きりだった。
Nさんは真剣に仕事に取り組んでおり、その横顔には明かりが差していた。
しかし急にNさんが机から立ち上がり、不気味な表情でOさんを見つめ始めた。
「君、ちょっと手伝ってくれないか?」
とNさんが囁くように言った。
その言葉はまるで別の人が話しているように聞こえ、Oさんは戸惑いながらも彼の仕事を手伝うことになった。
時間が経つにつれ、Nさんはますます不気味に変わっていく。
彼の顔には怒りと哀しみが入り混じり、何かに悩まれているようだった。
しかしOさんが問いかけても彼は黙り込み、ただじっと見つめ続けるだけだった。
そしてある瞬間、彼の姿が突如として消えた。
まるで霧のように、その姿が事務所の中から消失してしまったのだ。
Oさんは慌てて周りを見回すが、彼の姿はどこにもない。
一瞬、Oさんは知らない内に寝てしまったのだろうか?と思い、トイレや休憩室に探しに行ったが見当たらない。
どこに行ったんだろうと思いながら、Nさんの席に戻ってみると、彼の仕事机には何もない。
さっきまであった書類や資料、ちょっとした雑貨等が、まるで元から空席だったかのように何も見当たらない。
事務所は静まりかえり、深夜の寂寥感が残るだけだった。
次の日、OさんはNさんの姿を見かけなかった。
同僚たちは「Nさん?誰それ?」と、まるでNさんが存在しなかったかのような反応を見せた。
Oさんはスマホを取り出し、忘年会で撮った写真を見せようとしたのだが、Nさんの姿がどこに映っていない。
彼の名前も顔も、あたかも一夜のうちに完全に忘れ去られたかのようだった。