大学生のショウタとユウキは、肝試し好きな二人組だった。
「おい、ショウタ、聞いたか?あの廃墟になった遊園地のこと…」
「ああ、"◯◯遊園地"か?なんで急にそんな話…」
ショウタがスマホゲームに熱中しながら答えると、ユウキはニヤリと笑って続けた。
「あそこ、出るらしいぜ…マジもんの幽霊が…」
ユウキの言葉に、ショウタはゲームの手を止めて顔を上げた。
「マジもんの…って、どんな幽霊だよ?」
「それがなぁ…夜になると、誰もいないメリーゴーランドが勝手に動き出すんだと。
で、その上に乗ってるらしいんだ…小さな女の子が…」
「…は?」
ショウタは思わず間抜けな声を出した。
そんなバカな…。
子供騙しの作り話だろう。
そう思ったが、ユウキの目は真剣だった。
「なぁ、ショウタ!今度の週末、確かめに行ってみないか?肝試し!!」
いつものようにユウキの冒険心に火がついてしまったらしい。
ショウタは呆れながらも、内心では少しだけワクワクしている自分がいた。
そして週末、二人は◯◯遊園地の門前に立っていた。
「うわ…マジで廃墟じゃん…」
錆びついた門扉、雑草が生い茂る園内、そして不気味な静けさ…。
かつての賑わいはどこにもなく、そこにはただ朽ち果てた夢の残骸が広がっているだけだった。
二人は肝試しとはいえ、さすがに昼間から遊園地に入る勇気はなく、日が暮れるまで近くのファミレスで時間をつぶした。
完全に日が沈んだ頃、再び◯◯遊園地へと戻ってきた。
「…行くぞ、ユウキ」
ショウタは懐から懐中電灯を取り出し、門扉をくぐった。
二人は人気のない遊園地をゆっくりと進んでいく。
壊れたゲーム機、色褪せたポスター、そして人気のない売店…。
あたり一面に廃墟特有の陰鬱な空気が漂っている。
「なぁ…幽霊とか、本当にいるのかな…」
ショウタは不安げに呟いた。
するとその時だった。
遠くの方からかすかにメロディーが聞こえてきたのだ。
ショウタとユウキは、顔を見合わせた。
そのメロディーは、◯◯遊園地のシンボルでもあったメリーゴーランドの音楽だったのだ。
二人は音を頼りにメリーゴーランドがある広場へと向かった。
そして広場に足を踏み入れた瞬間…ショウタとユウキは、息を呑んだ。
「うそだろ…?」
目の前のメリーゴーランドは動いていたのだ。
誰もいないはずのメリーゴーランドが、ゆっくりと、しかし確実に回転しているのだ。
その様子は、まるで誰かがスイッチを入れたかのように、不自然なほどにスムーズだった。
そして…いた…。
ショウタは回転する木馬の上に見つけた。
白いワンピースを着た小さな女の子の姿を…。
その少女はこちらに気づいている様子もなく、ただ静かに一点を見つめたまま、ゆっくりと回転しているだけだった…。
二人は恐怖でその場から動くことができなかった。
やがてメリーゴーランドの音楽が終わりを告げ、回転がゆっくりと止まった。
また少女の姿も消えていた。
ショウタとユウキは恐怖で顔面蒼白になりながら、一目散に遊園地から逃げ出した。
それから数日後…。
ショウタはユウキから、ある記事が載った新聞を見せられた。
それは、◯◯遊園地が閉鎖される数日前、園内で遊んでいた女の子が行方不明になり、今もなお見つかっていない…という記事だった。