夜遅く、最終電車が駅と駅の間を走っていると、線路の上を人影が走っているのが見えることがあるらしい。
その影は突然現れて、何もなかったかのように消えてしまうと言う。
その日、Oさんは最終電車を運転していた。
静かな夜、電車のライトが暗闇を照らして行く中、慎重に運転していた。
すると遠くに白いものが動いているのが見えた。
「まさか人か!?」
と驚きながら急いでブレーキをかけて電車を止めた。
Oさんは確認の為、懐中電灯を持ち線路を確認しに行った。
しかし線路の上には誰もいなかったのだが、妙にそこだけ冷たい風が吹き抜けていた。
「見間違いだったのかもしれない」と思いながらも、何かが引っかかる気持ちを抑えきれなかった。
翌日、Oさんは同僚にこの出来事を話した。
同僚は一瞬顔を曇らせ
「実はあの区間には昔から奇妙な噂があるんだよ」
と話し始めた。
その噂によると、何年も前、あの場所で一人の若い女性が事故に遭い、命を落としたという話だった。
その女性は歩いて帰宅途中、柵を乗り越えて線路で事故に遭ったらしい。
それ以来、彼女の霊が最終電車の前に現れると言われている。
Oさんはその話を聞いて背筋が凍る思いがした。
彼が見た白い影は、もしかするとその女性の霊だったのかもしれない。
それからというもの、Oさんはその区間を通るたびに胸の中に重い何かを感じるようになった。
今でも夜が更けると、線路の上に白い影が見えることがあるんだそうだ。