友人のRはアンティークや骨董品に興味があり、よくネットオークションを眺めていたそうだ。
ある日、彼はとんでもない掘り出し物を見つけた。
それは木彫りの仏像。
温かみのある木目、柔和な顔立ち、そして何より目を引いたのはその値段だった。
(こんな値段で、ありえない…)
本来なら数万円はするであろう仏像が、たったの数千円で出品されていたのだ。
説明文には「古い蔵から出てきたもの。詳細は不明」とだけ書かれていた。
Rは多少の不安はあったものの、その仏像の魅力に抗えず入札ボタンを押した。
その後その仏像には誰も入札してくることなく、彼は仏像を落札したのだった。
数日後、仏像が届いた。
予想以上に大きく、ずっしりとした重みがあった。
(すごい…本物だ…)
Rはその精巧な作りに感動した。
特にその優しい微笑みをたたえた表情は、見ているだけで心が安らぐようだった。
彼は早速自分の部屋の一番目立つ場所に仏像を置いた。
(良いものを見つけたなぁ…)
Rは満足げに仏像を見つめた。
だが、その夜から奇妙なことが起こり始めた。
夜中に目が覚めると、仏像の方からかすかに話し声が聞こえてくるのだ。
(気のせいだよな)
最初は気のせいだと思っていたのだが、次の日も、また次の日も毎晩のように話し声が聞こえてくる。
そしてある夜、Rは恐ろしいことに気付いてしまった。
仏像の表情が変わっているのだ。
昼間見ていた穏やかで慈悲深い表情は、そこにはなかった。
薄暗闇の中、仏像は目と口を歪ませ、憤怒の顔をしていた。
「う、うわあああああああーーーっ!」
恐怖に耐え切れず叫び声をあげた。
その後、折角手に入れたものだが出品して売ってしまったそうだ。