毎年恒例、お盆の迎え火。
パチパチと音を立てる炎を見つめながら、線香の香りに包まれ、ご先祖様との再会を心待ちにしていた。
「今年も無事に帰ってきてください」
そう呟いた時、何かが視界の端に映った。
燃え盛る炎の中に、見慣れない老人の姿が浮かび上がっているのだ。
白い浴衣を着てやせ細った体に長い白髪。
どこか寂しげな表情を浮かべている。
「あの人誰だ?」
しかしご先祖様に違いないと思い、手を合わせ改めて迎え火を見つめた。
炎が大きくなるにつれてその姿がはっきりと見えてきた。
「しかし仏壇の上に飾ってある写真にはいない人だな、もしかして迷い込んだ人だろうか?」
そんな考えが頭をよぎった瞬間、老人がゆっくりと口を開いた。
「ここは何処じゃ?」
かすれた声はまるで遠くから聞こえてくるように、どこか頼りない。
「ここは〇〇家ですよ。あなたはどなたですか?」
問いかけても老人は首を傾げるばかり。
「わからぬ何も思い出せん」
そして何かを思い出そうとするかのように、眉間にシワを寄せた。
その表情はまるで深い悲しみを湛えているようにも見えた。
その時、風が吹いて迎え火の炎が揺らめいたのだが、それと同時に老人の姿は消えてしまった。