不思議な話
Tさんは一人暮らしを始めて数ヶ月、生活にも慣れてきた頃だった。 深夜、寝静まったアパートの中で、ある奇妙な音に気づいた。 ガタガタ、ゴウンゴウン…。 洗濯機が回っている音だった。 しかし電源は切ってあるし、そもそも夜中に洗濯する習慣はない。 最初…
Kさんが大学生の頃、地方の大学へ進学するため、山沿いの町へ引っ越した。 その町には、戦時中に作られたという防空壕が点在しており、中でもKさんの住まいからほど近い斜面に口を開ける大きな壕は、地元でも有名だった。 崩落の危険があるから近寄るな、と…
登山好きのMさんは、秋の山道を一人で歩いていた。 目的の山頂まではまだ距離があったが、少し開けた小さな台地を見つけたため、休憩を取ることにした。 そこには、なぜか水面が広がっていた。 湖というよりは、直径二十メートルほどの小さな池。 だが、その…
Yくんが小学校四年生だった頃の話。 季節は冬だった。 学校が終わると、Yくんはいつものように友達と校庭で日が暮れるまで遊んでいた。 鬼ごっこをしたり、サッカーボールを蹴ったりしているうちに、空は藍色に変わり、あたりはもうだいぶ暗くなっていた。 …
今回この話は2つのバージョンを用意しましたので、お好きな方をどうぞ。 1つ目 Iさんは大学の登山サークルに所属していて、その日は仲間たちと連れ立って、少し険しい山を訪れていた。 新緑が眩しい季節で、鳥のさえずりが心地よく響く、ごく普通の登山にな…
旅行で訪れた古びた旅館で、Rさんは一人、静かな夜を過ごしていた。 深夜、ふと目が覚めると、部屋の隅に白い着物をまとった女が立っているのが見えた。 ぼんやりとした視界の中、その姿はまるで生きているかのように見える。 Rさんはびっくりして飛び起きた…
会社員のSさんは、夜遅くにかかってきた電話を終えたばかりだった。 スマートフォンの画面に目をやると、通話履歴には「非通知」の文字が並んでいる。 Sさんは首を傾げた。 通話中、確かに画面には友人のKさんの名前が表示されていたはずだ。 会話の内容も、…
会社員のTさんが残業で遅くなった時のこと。 地元の駅に着いた時、時計の針はすでに深夜を回っていた。 終電を少し過ぎた静けさが駅前に広がる。 いつもならまっすぐ家に帰るTさんだが、その日はなぜかふと足を止めた。 疲労でぼんやりとした頭で、見慣れな…
Nさんが小学生の頃、自宅の裏山には小さな発電施設の跡地があった。 古びたコンクリートの壁にはひびが入り、草木が鬱蒼と茂り、子供たちの間では「おばけでるぞ」と噂される場所だった。 しかし、Nさんは好奇心旺盛な子供で、いつもその廃墟に心を惹かれて…
私の友人のKさんは、都心で一人暮らしをしている。 仕事はデザイナーで、自宅で作業することが多い。 朝食はいつも決まったカフェで摂るのが習慣だった。 ある日の朝、Kさんはいつものようにカフェに向かった。 お気に入りの窓際の席に座り、スマートフォン…
これはRさんという人が、祖父のTさんから聞いた話で、とある地方の山奥にある、小さな村での出来事だった。 その村は、地図にも載っていないような場所にあった。 外界との唯一の繋がりは、険しい山道を一本だけ。 その道の入り口には、昔から古びた道標が立…
田舎巡りが趣味のHさんは、今日も地図を頼りに人里離れた集落を探して山道を走っていた。 古い農村の風景や、忘れ去られたような神社を見つけるのが好きだった。 しかしこの日は少し様子がおかしかった。 午前中から深い霧が出ていて、山道はまるで白い壁に…
「これは、私がまだ若手の美術教師だった頃の話です」 美術の授業の終わり、生徒たちにせがまれて、K先生は少しばかり声を潜めてそう語り始めた。 冬の時期という事もあり、教室の窓の外はすでに夕焼けが暗くなり始めていた。 その日、K先生は提出物の確認が…
介護施設で夜勤を終えた早朝、Yさんは車で自宅に向かっていた。 眠気のせいでまぶたが重く、ナビの音もぼんやりとしか頭に入ってこなかった。 次第に記憶が曖昧になり、気づいたときには見覚えのない小道を走っていた。 舗装はされているが道幅は狭く、両側…
建設会社で働くSさんは、夜の現場作業を終えた帰り道、唐突にラーメンが食べたくなった。 時計を見ると午前1時をまわっていた。 普段ならまっすぐ帰宅する時間だが、その夜は空腹が勝っていた。 車を運転しながら見慣れぬ路地にハンドルを切った。 住宅街の…