常に友人の居場所がわかる位置情報共有アプリ。
安心感を得るためのツールが、都内のアパートで一人暮らしをする大学生のTさん(20歳)にとっては、拭いきれない戦慄の種となった。
「最初はバグだと思ったんです。
親友のアイコンが、夜になると必ず私の部屋と同じ場所に重なるんですから」
親友のSさんは、一ヶ月前に不慮の事故で亡くなっていた。
しかし、Tさんのスマホの中では、Sさんのアイコンは今も生き続けている。
そして毎晩、深夜2時を過ぎるとSさんのアイコンは街を横切り、Tさんの住むアパートのピンと完全に重なり合うのだ。
建物の外を確認してもそこには誰もいない。
深夜の住宅街は静まり返っている。
しかし、画面の中では、SさんのアイコンがTさんの家に来ている。
「怖くなってアプリを削除しようとしたんです。
でもアンインストールできない。それどころか通知が来たんです。
『Sさんがあなたの近くに到着しました』って」
Tさんの部屋はアパートの2階。
その真下、1階の部屋は数年前から入居者のいない空き部屋だった。
ある夜、耐えきれなくなったTさんは、床に耳を押し当てた。
冷たいフローリングの向こう側。
誰もいないはずの階下から、微かに喋り声が聞こえてきた。
それはスマホの通知音と同時に響いた、聞き覚えのある親友の声だったという。
位置情報が示すのは、物理的な距離だけではない。
それは時に生者と死者の境界線さえも、無機質に繋ぎ止めてしまうのかもしれない。