大学生のAさんたち5人は、年末休暇を利用して山奥の小屋に泊まることにした。
地元の人が「使っていないから自由に使っていい」と教えてくれた場所で、古びた薪ストーブが中心にあり、壁際には簡素な布団が並べてあるので使ってくれとの事だった。
Aさんたちは到着するなり急いで中に入り、ストーブに火を入れて小屋の中を暖めた。
夕飯を終えて寝る準備を整えた後、それぞれ好きな場所で寝る事になったのだが、Aさんは壁際の布団で寝ることになった。
夜が更け仲間たちが眠りにつく中、Aさんだけがなかなか寝付けなかった。
薪のはぜる音と吹雪の風音が響く中、突然かすかなに雪を踏みしめる足音が聞こえた。
こんな時間に山小屋に人が来るのはおかしいと思い、気のせいだと自分に言い聞かせたが、次第にその音は小屋の周りを回るように聞こえ始めた。
そのうち足音は消え、代わりに窓を叩く音が聞こえた。
外は真っ暗で雪が激しく降り続けているため何も見えない。
「風だろう」と自分を納得させようとしたが、次に聞こえたのは囁くような声だった。
はっきりとは聞き取れないが、どうやら誰かが名前を呼んでいるようだった。
「…さん、Aさん…」と。
怖くなり仲間を起こそうとしたが、誰も目を覚ましてくれない。
しかし周りを見渡すと、布団で寝ているはずの1人の姿が消えていた。
布団はきれいに畳まれており、まるで最初から誰もいなかったかのようだった。
翌朝、皆が目を覚ました時、消えた仲間のことを誰も覚えていなかった。
Aさんが「〇〇さんは?」と尋ねても、「そんな人最初からいなかったよ」と笑うばかりだった。
そんなバカなと外に出て見てみたが、昨夜の足跡は既になく、ただ雪が降り積もっているだけだった。