Fさんが大学の友人たちと一緒に、山を散歩していた時の事。
夕暮れが迫り、山の中は徐々に薄暗くなっていく。
彼らは少し道に迷ったものの、楽しげに山道を進んでいた。
だがふとした瞬間、Fさんは遠くから微かに聞こえる音に気づき耳を澄ませた。
それはかすかな祭囃子の音だった。
太鼓や笛、賑やかな声が混じり合い、どこか懐かしい感じさえするその音に、Fさんは足を止めた。
「聞こえる?あれ、祭りの音じゃない?」
Fさんが友人にそう言うと彼らも立ち止まり、耳を傾けた。
確かに誰かが祭りを楽しんでいるような音が聞こえてくる。
「この山で祭りなんてやる場所があるのか?」
友人の一人が不思議そうに聞いたが、誰もそんな話を聞いたことがなかった。
好奇心に駆られた彼らは、音のする方向へ進むことにした。
森の奥へと進むにつれ音は次第に大きくなり、まるで彼らを呼んでいるかのようだった。
道はだんだんと狭くなり、木々が密集する中を歩いていると、急に開けた場所に出た。
そこには提灯が灯り、誰かが設置した祭りの屋台が立ち並んでいた。
だが奇妙なことに、周囲には誰一人として姿が見えなかった。
それでも祭囃子の音は変わらず続き、遠くから楽しげな声が響いている。
「どうして誰もいないのに、こんなに賑やかなんだ?」
不安に駆られたFさんたちはその場を離れようとしたが、足がすくんで動けなかった。
その時、ふと気づいた。
提灯の明かりに照らされているのは自分たちだけではない。
闇の中、いくつもの影が音に合わせてゆらゆらと踊っていた。
Fさんたちはその場にへたり込んでしまったが、なんとかゆっくりと四つん這いで移動し、だいぶ離れたところまで来たところで立ち上がり、震える足で走って逃げたそうだ。